【前回】「イノベーションを生み出す「ビジネスデザイン」とは? 濱口秀司【前編】」はこちら
デザインビジネスはフロンティア
——ビジネスデザインの需要が盛り上がり、そこを狙って参入する企業が増えています。現在の状況を、どのようにご覧になっていますか。
濱口:ビジネスデザイン自体は、そんなに流行しているわけではないと思います。それよりも「イノベーション」という言葉に対する需要が、世界中で拡大していると考えています。その背景は、先ほど言ったバリューチェーンにおいて、最初の部分の価値が高く、ビジネス的なうま味が理解されるようになったからでしょう。
AppleやFacebook、Amazonを見ても、初期の発想の重要性が分かりますよね。そういうえも言われぬ雰囲気が「イノベーション」と表現されています。
僕は、これまで様々な企業の提案書を見てきましたが、はっきり言ってイノベーションを起こしたコンサルティング会社は存在しません。ビジネスデザインやイノベーションは非常に複雑で、単にアイデアを思いつくだけでは意味がないのです。
イノベーションの重要性が理解されてきたため、これから面白くなる領域ではないでしょうか。
——ビジネスデザイン業界は、フロンティアと呼べる状況にあるのですね。そういう中で、電通と仕事をして見えてきたことはありますか。
濱口:電通にならば、僕のノウハウが移植できるのではないかと期待しています。僕は「道化(みちか)」と呼んでいますが、日本人は何でも「道」にしたがりますよね。例えば、棒切れを振り回すだけなのに「剣道」、お茶を飲むだけなのに「茶道」が生まれました。この特性は世界的に見ても、非常に珍しいことです。
ビジネスデザインも、これから発展していく深い世界なので、「道化」する日本人が多いと思います。そうなると、ビジネスデザインがカルチャーとして根付いていくはずです。
——同じように、日本のクライアントに感じている特徴はありますか。
濱口:ありますね。アメリカのクライアントはコンサルティング会社を雇っている感覚で「結果」という単一的なゴールを求めます。
一方で日本企業の場合は、結果に加えて「学ぶ」という目的が入ります。費用や時間を掛けても、ビジネスデザインのプロセスを入手して、自社の能力を高めたいというロングタームの視点を持っているのが、日本企業の特徴です。