ペイドメディアには絶対にできない記事が次々と生まれている
藤崎:アンバサダープログラムによって、コアなファン一人ひとりに製品や企業への理解を深めてもらえたことは大きな成果だと思います。他の成果についても教えてください。
横塚:第三者が書いたデルに関するWebの記事が、目に見えて増えました。今では「デル アンバサダー」「デル 新製品」といったキーワードで検索すれば、たくさんの記事が出てきます。
「XPS 13」のモニターを兼ねたアンバサダーの座談会は、2017年11月に第3回目を開催しましたが、毎回、何百というツイートやソーシャルの投稿、ブログ記事が発信されています。
お金を払って記事を制作する場合も、5本も10本もつくろうとしたら、かなりの時間と労力がかかります。それに比べて、アンバサダーは、発信するスピードが全く違います。これって、本当にすごいことだと思うんです。
藤崎:やはり、ファンが書く記事は熱量が違いますよね。
横塚:私自身、雑誌の記事を読んでいてページの端に「PR」という記載があると、なんだ広告かと興ざめしてしまう反面、プロダクトに関する記事を世に広めるには、広告に頼らざるを得ない部分も少なからずある、とこれまでは感じていました。
藤崎:記事広告やスポンサードの記事は、今はどのくらい出稿されているんですか。
横塚:実は、アンバサダープログラムを始めてからは、お金を払う記事はやめたんです。今は、基本的にアンバサダーに書いてもらう記事と報道メディアによる記事だけに絞っています。また、新製品発表会にもアンバサダーをお招きするようにしました。メディアの記者の方、パートナーの方に加えて、アンバサダー記者という立ち位置です。
藤崎:海外にもプレスとアンバサダーを同等に扱う事例がたくさんあります。ファン代表の彼らを重視することで、企業への好意度も高まるようです。また、アンバサダーが書く記事は、そもそもメディアの記者が書く記事とは全然違いますよね。
横塚:熱量もさることながら「目線」が違います。例えば、プレス発表会に参加した方は、新製品だけでなく、会場の様子やスタッフの様子も書かれたりします。また、座談会に参加した方は、「デルの座談会に行って、製品はこうでした」に加えて、「デルの社員と話してみて、こう思いました」といったことも書いています。このように、アンバサダーの方々が消費者に近い目線で積極的に発信してくださることで、その記事を読んだ一般消費者が、デルブランドへの理解や信頼を深めることにつながっていると感じています。
また、イベントに参加されたアンバサダーからも、「デルは外資なので、なんとなく無機質なイメージを抱いていたが、実際に話してみると全然違っていた」という感想や、「直接交流の場を企画してくれてありがとう」というお言葉をいただいたくことがあります。企業とファンという関係を超えて、人と人との関係になっていることに、デルの社員として、アンバサダーの取り組みを始めて本当によかったと感じています。
藤崎:いいお話です。アンバサダープログラムの本質的なポイントは、そこにあると思います。
横塚:アンバサダーの方々が書く記事は、お金を払って書いてもらう記事と違って、どれだけその製品やデルが好きなのかといった個人の気持ちが入っています。彼らの言葉には嘘がなく、熱意であふれていますので、それが説得力を生み出しているんだと思います。
藤崎:横塚さんご自身が体験された洗濯機のエピソードもそうですが、自分が本当に良いと思ったものを人に薦める時は、説得力が違います。
横塚:やはり自分が好きなものは、きちんと伝えたいですから、相手にわかってもらうために努力すると思います。どのように書いたら伝わるか、どういう写真であればわかってもらえるかなど、かなり考えるはずです。アンバサダーは、このような目線をお持ちなんです。
藤崎:「消費者目線」で、しかもお金では買えない「気持ち」まで書いてくれるわけですね。