世界の新しい常識「シンギュラリティー」とは?【電通デザイントーク・後編】

知能が二極化していく可能性

松田:井上さんは経済的二極化が起こるのでベーシックインカムが必要だとおっしゃっているけれど、ハラリ氏は「将来は『知能』が二極分化する」と言っています。

松田 卓也
神戸大学名誉教授。理学博士。NPO法人あいんしゅたいん副理事長

国立天文台客員教授、日本天文学会理事長などを歴任。『これからの宇宙論 ~宇宙・ブラックホール・知性』『人間原理の宇宙論 ~人間は宇宙の中心か』『間違いだらけの物理学』ほか著作多数。2013年に書籍『2045年問題 ~コンピュータが人類を超える日』(廣済堂新書)を発表し、日本にいち早くシンギュラリティーを紹介した。15年から「シンギュラリティサロン」主催しており、日本のシンギュラリティーのコミュニティーの中心人物。

つまり、金持ちは頭に人工知能を接続して超知能になれる。普通の人間の知能指数を100だとすると1000にすることができるわけです。そうなった時に何が起きるのか。

例えば、ビル・ゲイツ氏のようなお金持ちと、そうでない普通の人がいるとします。今は、たとえゲイツ氏が何兆円もの資産を持っていたとしても、普通の人の100万倍長生きするわけではありません。100万倍健康でも、100万倍幸せでもない。

ところが、将来それが変わるのです。金持ちは100万倍長生きし、100万倍賢くなるわけです。そうなると、ただの経済格差ではなく、知能の格差が発生することになる。こんな状況は、耐えられません。

そこで僕の提案です。政府が、国民で希望する者には、子どもが産まれた時に予防注射のように脳にベーシックインテリジェンスを埋め込むのです。

ジョバン:面白いですね。ベーシックインテリジェンスは、素晴らしいビジネスになると思います。

斎藤 和紀
Spectee社CFO、iROBOTICS社CFO、Exoコンサルタント

米国「シンギュラリティ大学」のエグゼクティブプログラムの卒業生で、日本の卒業生たちのネットワーク組織「Exponential Japan」を立ち上げ、共同代表として活動の中心を担っている。2017年5月に『シンギュラリティ・ビジネス ~AI時代に勝ち残る企業と人の条件』(幻冬舎新書)を出版。2017年シンギュラリティー大学グローバルインパクトチャレンジ・オーガーナイザー。金融庁職員、石油化学メーカーの経理部長を経た後、ベンチャー業界へ。シリコンバレーの投資家・大企業からの資金調達をリードするなど、成長期にあるベンチャーや過渡期にある企業を財務経理のスペシャリストとして支える。

斎藤:松田先生は、シンギュラリティーが来ると確信しておられますが、人工知能の研究者の中には「シンギュラリティーは来ない」と主張する人が意外と多いですよね。

松田:最近も話題になりましたが、日本の著名な研究者が「汎用人工知能は禁止すべきだ」とおっしゃった。僕に言わせると、その先生は勉強不足です。

前半に紹介しましたが、人工知能には「特化型」と「汎用型」、そして意識を持つ人工知能と意識を持たない人工知能がある。人々が恐れる「人を支配するようなAI」は、意識を持った強い「汎用型人工知能」です。僕は意識を持たない弱い汎用型人工知能でも、シンギュラリティーを起こせると考えます。

それに、日本が「汎用型人工知能」を禁止しても、アメリカや中国をはじめ、日本以外の国が取り組むでしょう。

斎藤:シンギュラリティーの到来が、問題の本質ではないのです。科学技術がものすごいスピードで進化していることは間違いないのですから、一見すると実現不可能なアイデアでも、挑戦していけば面白いことが起きるかもしれません。

ジョバン:シンギュラリティーのテクノロジーを使えば、今は解決が難しいような問題を解決できるようになります。そういう側面を、もっと見てほしいなと思います。

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