まずはゴールド受賞作「アラウーノ」のラジオCMから
吉田:僕らは2時間の番組をやるのに打ち合わせ15分など平気であるんです。それもまたよしとされているというか。打ち合わせして、それを20秒に落とし込んでいたりするわけですよね。でも、今回は手の込んだ音の面白がらせ方ってこんなに技があったんだな、単純にやりすぎていたなと、ちょっと普段を恥じ入りました。あれをうちの番組のディレクターさんや放送作家さんがやってくれたら、番組のクオリティ上がると思う。勉強になりました。
権八:うれしい感想ですね。
澤本:ラジオの違った現場を踏んでいらっしゃる方だから、僕らがする議論と意見が違って面白いのよ。
吉田:あ、違うんですか?
澤本:違いますね。編集の話をするよね。ここでこう出てきたほうがいいという話をするから、それが意外とCMと番組で違うんだなと思ったりして、面白かったですよ。
中村:600作品の中からゴールド、シルバー、ブロンズの入賞作品で18本にまで最終的に絞られていって、今日はゴールドの2本に選ばれたものをみなさん聞いていただこうと思うんですが。ゴールド覚えてらっしゃいます?
吉田:もちろん覚えてますね。このへんになると、5回は絶対に聞いていて、10回ぐらい聞いてるかもしれないですね。最終的に僅差になるわけですよ。そうすると、どっちをシルバーにして、ゴールドにというときにもう一度聞いてみましょうという話になるんですよね。結局、何度も聞いて楽しいものが強かったという気がして。でも、何度も聞いて楽しいということはCMの本意からずれてないですよね。
中村:なるほど。ではここでゴールドを受賞したCMを1本目から聞いていただきましょう。ゴールドの2作品のうちの1つめはパナソニックの「全自動おそうじトイレアラウーノ」です。
吉田:こんなCM・・・こんなとあえて言いますけど、このCMを権八さんがバロック音楽を聞いてる人みたいな感じで、難しい顔をして目を閉じてヘッドフォンに手をやって聞いているというのが、どうしちゃったんですかという(笑)。
中村:権八さんぐらいのクリエイターになると、残尿感の話を聞いても空を見ているのと同じような(笑)。
吉田:残尿感なのにハイドンみたいな感じ。中村さんはニヤニヤしながら聞いてるじゃないですか。それはわかるんですよ。権八さんどうしたんだろうと思いながら。
権八:何だろうな、思うところがいっぱいありまして、残尿だったり。そうだっけな?など、いろいろ考えたりしてしまったり。僕はわりと想定の範囲内という気がした。
澤本:ラジオの原稿として?
権八:そうそう。もちろん面白いCMなんだけど、いつすごいのが飛び出すんだろう、というのを待っていて。すみません。
澤本:目をつぶって待っていたら、飛びださなかったと。
権八:いやいや、でも面白かったですよ。流石。
中村:今聞いていただいたのは、今年のACC TOKYO CREATIVITY AWARDSラジオCM部門のACCゴールドを受賞した2作品のうちの1つ。だから、グランプリを含めるとトップ3ですよね。パナソニックの日本男児のトイレ事情だったんですけど、これをゴールドに決めた経緯、審査員たちはどんな議論をされたんでしょうか?
橋本:これはCMでありながら、ラジオのコーナーの中でよくあるようなインタビュー形式で素人さんの実際のエピソードを聞くというコンテンツですよね。リスナーのメッセージ投稿にも近いものがありますけど、そういうラジオの本編のようなクオリティのものをCMとして流しているので、CMと言いつつ、つい聞いてしまうという長尺のラジオのコンテンツになっているというところがまずあって。あと、聞き手の手法もトイレ事情を実際の男性の方に聞くという企画書上の文字以上の聞き手の方の微妙な恥じらい、間が表現できていたので、非常にラジオCMっぽいなという風に思ったという話もありました。
吉田:ACCの授賞式でうかがったら、つくった人が聞き手なんですね。
権八:えー!?
吉田:インタビュアーの女性が。そこも真摯に、本当に男性のトイレってどうなってるんだろうって本気で気になってる人じゃないですか。こんな人をどこから探したんだろうと思ったら、そういうことだったのねと。
中村:途中で聞き手が笑っちゃってましたからね。
橋本:FMナビゲーターっぽい上品さ、気品をもってる感じのしゃべりだなと思ったんですけど。
権八:確かに。
吉田:男性3人の、井村さん、三田村さん、土方さんも、パーソナリティが最後出ちゃってるんですよ。もしかしたら土方さんのコーナーは今後あってもいいんじゃないかなと。土方さんが若い女の子にセクハラをするだけのコーナーなどは十分聞けるなと。