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2017年は、ネット広告業界の分岐点となる年ではなかったか
2017年も、終わろうとしています。今年は世界的にも、ネット広告業界にとっても、大きな分岐点となる年として記憶されると思います。
●1月にはP&Gのマーク・プリチャード氏が、ネット広告を中心としたメディア業界の不正を問題提起するプレゼンテーションを行い、多いに話題になりました。
参考:P&Gが広告の透明性を強く業界に訴え、20年で最高のスピーチと絶賛される
●3月には、YouTubeにおけるヘイト動画への広告掲載問題が、広告主のボイコット運動に発展。
参考:YouTubeが悪質なビデオにも広告を流すことに怒って今度はAT&TとVerizonがGoogleへの広告出稿をボイコット
●夏前には、グーグルやアップルが相次いでブラウザに広告ブロック機能を導入することを発表し、大きな話題に。
参考:なぜグーグルは自らの首を絞めかねない広告ブロック導入に踏み出すのか
●さらには9月には、米FTVがインスタグラム上におけるステマ追及に本格的に乗り出したというニュースもありました。
参考:米当局がインスタグラムの「ステマ」追及、セレブ21人調査
日本でも、昨年のWELQ問題を起点としたコピペメディア騒動の関係で、NAVERまとめに広告を配信する企業に対して、中止を求める署名運動が呼びかけられたことも記憶に新しいです。
今年に入っても、様々な企業のネット動画広告が批判を受けて炎上したり、謝罪や削除に追い込まれたりしたケースが多々ありました。
さらには、ついに今月には雑誌「週刊 東洋経済」が「ネット広告の闇」と題した特集を実施。ネット広告に対する問題提起も、来るところまで来たといえるでしょう。
私が所属するWOMマーケティング協議会でも、昨今の日本のインフルエンサーマーケティングにおいて、関係性明示が適切にされていないケースが増えているとして、1年近くの時間をかけてガイドラインを改訂する議論を行いました。
参考:クチコミマーケティングに関するガイドラインを5年ぶりに改定 – WOMマーケティング協議会
こうした様々な出来事や議論を聞いて、個人的に強く感じているのが、少なくともネット上では、もはや「広告」が多くの人に嫌われる存在になってしまっているということです。
今年5月にアドタイで、LINEの田端信太郎さんが「広告はもはや嫌われものなのだ」というコラムを書いて話題になっていました。もはや広告業界全体が、この事実を直視しなければいけない状況になっているのは間違いありません。
私自身は、マス広告やネット広告のようなペイドメディア側の人間ではなく、アンバサダープログラムを軸にクチコミやPRなどアーンドメディア側をビジネスにしている人間ですので、私がこうした問題を提起すると明らかにポジショントークになってしまうとは思っています。
しかし実際問題、マーケティング費や宣伝広告費を元に事業を運営している身としては、「広告が嫌われもの」になりつつある状態に、非常に懸念を感じているのが正直なところです。
昭和世代の私にとって、「広告」はある意味憧れの存在でしたし、今でもそうあるべき企業活動だと思っています。
そんなことを考える中で、ひとつ個人的にヒントとして提案したいのが、ネット広告において「宣伝行為をあきらめてみる」という思考実験です。