広告主の皆さん、2018年はネット上での「宣伝行為」を一度あきらめてみませんか。

“いびつなネット広告”に進化していないか

宣伝会議という会社の媒体で、「何をとんでもないことを」と言っているのだと思われることも多いかもしれません。実際、宣伝部の方々には、失礼な発言に受け止められてしまうリスクも覚悟の上です。

ただ、ここで言っている「宣伝行為」とは、宣伝会議がテーマとしている企業の宣伝部が担うべき広い意味での「宣伝」ではなく、顧客視点で見たときの「売り込み行為」のことです。

weblioによると「宣伝」という言葉には、「①主義・主張や商品などに関する知識・効能を広く人々に説明し,理解を得ようとすること。」と書かれている一方で、「②実際より大げさに言い触らすこと。」とも書かれています。

参考:https://www.weblio.jp/content/%E5%AE%A3%E4%BC%9D

残念ながら、多くのネットユーザーにとって「宣伝」や「広告」という言葉が、後者のネガティブな印象になってしまっているのは明らかでしょう。

ただ、これは明らかにこれまでのネット広告が、大量の宣伝メッセージをぶつければ消費者が動くという、「宣伝行為」大前提の元に実施されていたからだと感じています。

ページビュー至上主義、コンバージョン至上主義と呼ばれるような、言葉に表されるように、エクセルに表現できる数値だけを元にネット広告投資を最適化する流れが行き過ぎてしまった結果、ブランドセーフティーやビューアビリティー、ユーザーの希望などが置き去りになった“いびつなネット広告”に進化してしまいました。

とにかく広告を大量に表示して、できるだけ多くのネットユーザーに表示すれば、その中からコンバージョンが生まれるはずだという確率的な考え方は、ある意味「北風と太陽」の逸話における北風的な考え方といえます。

その象徴的な言葉が「宣伝行為」だと考えています。

ひるがえって、私個人が好きだった昔の優れた広告を振り返ってみると、「宣伝行為」であることを前面に出した北風的な広告というのは、実は少なかったのではないかと思えてきます。

思わず歌や踊りを真似したくなってしまう楽しい広告であったり、思わずテレビに向かって突っ込みたくなるネタ的な広告であったり、自分の生活がこうなったらいいなという憧れを刺激するような広告であったり。

そもそも「北風と太陽」における太陽的なアプローチの広告こそが、優れた広告だったのではないかと思えてくるのです。

もちろん、太陽的なアプローチであっても、それらも宣伝であり、広告です。しかし、我々視聴者は少なくとも、そういう優れた広告を「宣伝行為」とは受け取らず、会話のネタであったり、思考のきっかけだったり、「コンテンツ」として受け取っていたように思います。

次ページ 「宣伝メッセージを大量ぶつければ、消費者が動くという神話」へ続く

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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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