私たちミレニアル世代が消費しているモノとは
少し古い本になりますが、サービスデザインやUXデザインの文脈においてよく語られる「経験経済」のお話があります。
世の中で消費される価値のあるモノをいくつかに分類分けしていて、経済発展が進むごとに、人々に消費されるモノの主役が変化していくことを述べています。この中でジョセフ・パインとジェームス・ギルモアは、農産物のような「コモディティ」から、工業製品である「製品」、「サービス」と消費の主役進化したあと、人々が消費するようになるのは「経験」であると表現しています。「モノではなく、モノを消費するときに得られる体験」こそが、お金を払って購入されるようになる、と説いているのです。
これはまさに、マーケティング領域でも昨今、なんども語られるようになった「コト消費」そのものではないでしょうか。
「コト消費」が語られる文脈としてはこうです。“モノが溢れるほどに存在するようになったこの時代、基本的欲求はすべて満たされている状態になっている人々が、機能訴求といった”“モノ消費”に胸打たれる時代は終わっている。それよりもモノを消費する過程で得られる体験などといった “コト消費”に訴えかけるほうが、人々は心動かされるのだ“。
まさに、豊かになった私たちはもはや、「機能」を買って、毎日の暮らしの利便性をアップデートするのではなく、そのモノによってもたらされる「体験」によって、毎日の暮らしの気分のよさをアップデートしているのです。
さて、最初の化粧品のCMのお話に戻ります。
私たちがもし、「モノ」を買う消費者だったなら、その機能訴求に関する記述をくまなく見るでしょう。テレビCMで語られている効果にかんする文言や、パッケージ裏の成分表示まで、くまなく見るかもしれません。
けれど、私たちが今購入しているのは「経験」なのです。そして、リアリストの私たちは、キレイな女優さんが機嫌よく微笑んでいても、その気分が「演出」であることを知っています。
実生活にその商品を招き入れるにあたっては、必ずその“実際の気分”を知りたい、という欲求を抱いているのです。