デザイン性から環境への配慮まで時代に即した広告の表現
—大谷さんは商品広告だけでなく、ブランディングにつながる企業広告も担当されていました。
大谷:商品広告と企業広告の両軸で回すのが、パナソニックのスタイルだと思います。「高度ケータイ成長」をキャッチフレーズにした広告も企業広告のひとつです。テレビをはじめ、カメラ、オーディオなどを並べて携帯電話の形に見立てることで、「搭載されている機能の進化」をADとコピーライターが表現してくれました。これまで総合家電メーカーとして培ってきた技術が凝縮されていることを伝えています。宣伝部門の方からは、企業広告で大切なのはその時の社会性があるかどうかだと、口が酸っぱくなるほど言われていましたから。
雛形:オシャレで、伝えたいものがすぐわかるビジュアルです。
大谷:もちろん、広告で使われているものの多くがパナソニックの商品なんです。
雛形:そうなんですか。パナソニックの歴史がつまっているんですね。
—2000年代に入ると、商品広告は機能だけでなく、デザイン性を意識したものが目立ちます。
大谷:バッグに必ずといっていいほど入っているものですから、日用品として愛せるものかどうかが重要になりますよね。自分のバッグの中に嫌いなデザインのものを入れておきたくないでしょう?
雛形:自分の分身のようなものですから、好きなものを持ちたいですね。
大谷:自分の分身であり、切っても切れない関係にある携帯電話を、擬人化して表現したのが、リサイクルを促すCMでした。持ち主との思い出を、携帯電話が語っていくというストーリーです。使用済みの家電に眠る資源を「都市鉱山」と呼ぶようになる中で、環境問題をテーマにつくった作品でしたね。
雛形:同じ携帯電話でも、切り口がまったく異なるエモーショナルな広告です。いろいろな表現の仕方があるんですね。
—パナソニックのこれからに期待されることは何でしょうか。
雛形:携帯電話に限らず、家電製品はどんどん新しくなって、便利に使っているうちに自然に入れ替わっていて、気づいたら10年前とは顔ぶれが全く違うものになっています。入れ替わっていく裏にはパナソニックのものづくりがあって、皆さんの努力に助けられて暮らしているんだ、と改めて思います。これからもいい商品をわかりやすい広告で伝えていってほしいです。
大谷:商品は新しくなるけれど変わらないのは、商品の特徴を核として伝えるパナソニックの広告づくりの姿勢ですね。そもそもニュースがあるものづくりをされているわけですから、広告も、そこを核に考えれば、自ずとオリジナリティのある表現になっていくはずです。BtoB事業へのシフトを進められていますが、これまでと同様に、広告はまず、一人の心を動かすものであってほしい。一人の心を動かす表現は、多くの人の心も動かすはずです。
進化を続ける「つながる価値」
情報処理で生産性を上げ、通信で距離を超える。高度成長期以来、情報通信機器はビジネスを大きく加速させてきました。オフィス・オートメーションの中核にあったコンピュータは、オフィスに一台の時代から、一人に複数台の時代となり、ビジネスにパーソナルな楽しみにと、活躍の場を広げています。
自動車電話からはじまった移動体通信は、携帯電話で多くの人が利用するようになりました。音声だけでなく、文字や画像、映像でコミュニケーションを可能にし、そこで生まれた絵文字は日本のケータイ文化から、世界の標準へと進化しました。その進化の歴史の中で、パナソニックは端末から基地局まで一貫して携わり、人々のつながりを支えてきました。モノとモノとがネットにつながって、新しい価値を創造するIoT時代を迎えた今も、今までのノウハウを生かし、ビジネスに「つながる価値」を提供します。
情報通信宣伝年表
「パナソニック宣伝100年の軌跡」(11)技術の先にある、未来を描く—BtoBソリューション・デバイスの広告篇に続く
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