投資家に成長ストーリーを伝える長期的なESGコミュニケーション

国内外で活発化するESG(環境・社会・ガバナンス)投資。日本でもステークホルダーに向けて適切なESG情報の開示が求められている中で、投資情報を扱うQUICKと企業コミュニケーションを支援する日経BPコンサルティングが新サービスを開始した。

(左から)日経BPコンサルティング カスタムメディア本部第一編集部長 古塚浩一氏、QUICK ESG研究所プリンシパル 松川恵美氏、日経BPコンサルティング ブランドコミュニケーション部長 吉田健一氏。

昨今、ESGは企業コミュニケーションの核を担う概念として、経営層やIR部門はもちろん、広報部門や経営企画部門で注目すべきキーワードのひとつになっている。ESG戦略を推進するうえで広報の役割とは何か。ESGに詳しいQUICKの松川恵美氏(E SG研究所 プリンシパル)、企業のブランディングとコンテンツ制作を専門とする日経BPコンサルティングの吉田健一氏、古塚浩一氏が語った。

ESGは長期的な成長に不可欠

—そもそもESGとはどのような概念なのでしょうか。

松川:ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governa nce)の頭文字をとった言葉です(図1)。企業の長期的な成長のためにはこの3要素が必要と言われ、単純に「社会に貢献する」のではなく「企業活動を通じて、社会課題を国際基準に則って解決していく」という考え方です。

日本企業は中でも「S(社会)」の要素が弱く、例えば統合報告書でも「人権」の項目を掲載している企業は多いとはいえません。世界的に、強制労働や児童労働といった問題には厳しい目が向けられているので、海外の取引先にも人権への配慮を徹底させるなど、問題解決に取り組んでいくべきです。

—ESGは長期的な企業評価の指標として世界で投資家から注目されていますね。

松川:特に機関投資家は、20年後、50年後に「その会社がどのような方向に進んでいくのか」というシナリオを求めています。でも実際、どんなに数字を積み上げても50年先の予測は難しいので、財務以外の指標が必要になります。そのよりどころとなるのがESGです。

古塚:だからこそ企業は投資家に向けて、ESG情報を開示する必要があるのですが、従来のIRのように数字を列挙するだけでなく、ワクワクするような企業の成長ストーリーを描き、投資家をはじめとするステークホルダーに共感してもらう必要があります。

—ESGの推進は、企業のブランド価値向上にもつながるのでしょうか。

吉田:ブランディングの観点からも、目先の利益ばかり追求するのではなく、持続可能な企業経営であるかどうかが、まさに重視されています。そのため、理念を持ってESG戦略を中長期的に推進しているビジョナリーな会社のほうが評価として高くなります。

日本の文化として、社会貢献の取り組みは声高にアピールしないことが美徳とされる向きもありますが、それは機会損失です。広報戦略としてESG課題への取り組みを分かりやすくステークホルダーに発信すれば、企業のブランド価値を高めていくことができます。

松川:さらに言うと、ESG投資はグローバルなものなので、国連などによる国際規範の枠組みに沿って、必要な複数言語で開示・発信する必要がありますね。

次ページ 「課題を解決するストーリーを」へ続く


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