来店コンバージョン計測 活用業界広がる

グーグルが展開するオンライン広告では、その広告をクリックした人が、どれくらい、その広告に関連付けた実店舗に訪れたかを推計できるようになっている。「来店コンバージョン」という名称で、2015年にスタートした。コンバージョンは「転換」を指す言葉。広告閲覧者から来店者への“転換”というわけだ。

これまで、「来店コンバージョン」が利用できるのは、「Google検索」の結果に連動して表示する検索連動型広告だけだったが、ここ1年間で、「バナー広告」を配信する「Googleディスプレイ ネットワーク」や動画投稿・配信サービスの「YouTube」の動画広告でも、「来店コンバージョン」を計測できるようになった。

広告をクリックした人がどれだけ来店するのか─真っ先に着目したのは、もちろん小売業だった。

ローソンは2017年3月に実施した「ローソン得市」キャンペーンの一環で、配信したディスプレイ広告(バナー広告)がどれだけ来店客数の増加に貢献したかを計測した。

来店カウントはディスプレイ広告のクリックから7日以内の来店。配信先のターゲットは、主要顧客である25歳〜44歳に設定した。対象店舗は、ローソン約1万店。事前に各店の情報を、「Googleマイビジネス」(店舗地図情報)というグーグルのサービスに登録した。

結果、スマートフォンで広告をクリックしてから来店した人の割合は15.7%、パソコンとタブレット端末からの来店率は11.5%だった。来店単価(1来店あたりの広告費用)はスマホ向けのモバイル広告では来店1人あたり123円、パソコンとタブレット端末は同224円だった。ほかに、来店者の属性や利用時間などのデータも得られたという。

「来店コンバージョン」を計測するには、複数の実店舗を持ち、広告のクリック数(視聴数)が一定規模あり、来店数も一定のスケールが必要となる。統計的に正しく推計するためだ。

グーグル リテール業界統括部長
信濃伸明氏

グーグルの信濃伸明氏は、「売上高1000億円規模の企業でも利用事例が出てきた」と話す。

「携帯キャリアショップ、自動車ディーラー、外食店舗、金融機関などでの採用が増えてきました。とくに携帯キャリアショップでの動きが大きい。テレビCMで好感度を高める活動が主流ですが、施策が実際に契約につながっているのかどうかを確かめようという気運が高まっています」

来店に寄与しやすいのは、地域性を含むキーワード。地域指定の配信では、位置情報にもとづき、広告配信タイミングでそのエリアにいる人に届く。たとえば、コンタクトレンズ販売の「アイシティ」(運営=HOYAアイケアカンパニー)は、対象店舗から半径1キロメートル以内の人に対し、それ以外のエリアと比較して30%強化したところ、来店コンバージョンが54%増加したという。

「配信結果のレポートは、距離別でも出せますので、入札内容の改善に生かせます。ターゲティングは、オーディエンス×商圏×趣味嗜好×地域というふうに区分(セグメント)できるようになり、より精度が高まりました」

広告予算は、1人来店するとどれくらいの売り上げがあるのか、つまり、1人あたりの来店価値から割り出す。

「単発的な出稿で何人来店したかを見るだけでは、意味が薄いのです。それをもとに、次回はどこを改善すれば費用対効果を高められるのか。運用する、という意識が重要です」

こうしたことは、ネット通販の分野では、日常的に行われていることだ。販売サイト同様のことが実店舗でもできるようになった。

しかし組織の実態として、現在の担当割が従来メディアに最適化されているという大きな課題がある。オンライン広告はWeb担当で、という意識がいまだ根強いのではないか。

「消費者から見れば、ほしいモノが手に入れば、店舗でもECでもかまわないのです。テクノロジーが実態から先行しているように見えるかもしれませんが、実のところ先頭を走っているのは消費者です。企業が消費者に追いつけていない。いまこそオンラインとオフラインの垣根を外すときです」


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