フィルム写真が“インスタ映え”する本当のワケ。 — #3懐かしい未来の法則

ついでに、バブリーダンスの流行にも触れてみると。

昨年、「バブリーダンス」が話題になりましたね。

 

登美丘高校ダンス部がこのダンスで注目されると、年末にはMステや紅白デビューを飾り、ダンス部のキャプテンは女優デビューを果たすなど、「バブリーダンス」に関する話題がネットからお茶の間まで席巻したのは記憶に新しいと思います。忘年会の催し物でこのダンスを踊った人も多いのではないでしょうか。

ではなぜ、ここまで「バブリーダンス」は話題になったのかというと。ここにも、前述した「懐かしい未来の法則」が見え隠れしているように思います。

僕が捉えている要因は、まず、若年層の間で長らく浸透してきた「ネタ消費」文化の延長である、という側面。周囲を笑かすためのウケ狙い行為、とも言えるかもしれませんが、SNSを介して常時接続社会となった近年においては、クラスを飛び出してネット社会でも人気者になるスキルとも言えます。

一方で、一歩間違えれば単なる笑いモノにもなり得てしまうので、自分が傷つかないようはじめから自分を下げて笑いモノになる“自虐ネタ”が一般的になってきていたのも周知の事実。そんな風潮にあって、果敢にネタ消費に及ぶには「あの人がやってた」「あそこで今話題」という、ある種の安心材料が思わず欲しくなるものです。

そしてそれは、ピコ太郎さんやブルゾンちえみさん、平野ノラさんなどのお笑いネタによって“バブルノリの自虐ネタは安心して笑える”という、十分な助走とお墨付きが形成されていたのではないでしょうか。世の中もまた、そんな気分が蔓延していた気がします。

そんなタイミングに、ダンス部の女子高生がバブル時代のダンスと出会ってしまったことで、ネタ消費の新たなかたちになるという「現代価値」を見出した。「バブリーダンス」の話題化現象を、僕はそんな風に見ています。加え、あのダンスは“欲望のままに踊って自己表現する気持ちよさ”が「本質価値」ともいえますが、欲望が抑圧されがちな現代においてそれが許される、という点において「現代価値」に昇華されたという側面もあるかもしれません。

そして最後に、「写ルンです」と「バブリーダンス」がリバイバルブームを果たすに至った、共通する重要な要因についても触れておきます。それは、過去の流行ネタには振り向く層が幅広いという、極めてマーケティング的な側面。

シンプルな話、若者の間だけで楽しめるものにはやはり若者にしかその面白さが伝わりませんが、“昔の若者に流行ったもの”であれば、今は大人となったかつての若者たちが振り向きます。そしてかつての若者たちは今、人の親になっていたり、情報を取り上げるメディアの人になっていたりする。

そこに「バブリーダンス」という、過去の記憶をくすぐる流行ネタが、なぜか息子娘や今の若者に流行っているらしいという情報が飛び込んでくる。「若者の間でバブリーダンスが流行中?」という見出しがテレビやネットで踊れば、かつての若者たちが思わず興味を持ってしまうのも納得がいきますし、当時を思い出したり、踊れなかった後悔を取り戻したりするために、忘年会などの会社の行事で踊ってしまうのも頷けます。

過去の懐かしい流行ネタ×今風解釈/アレンジ=懐かしい未来という、この図式。広告においても、浦島太郎やハイジ、ブラックジャックなど過去の名作を今風にアレンジする手法が増えている印象ですが、ひょっとしたらそこにも同様の力学が働いているのでは、と感じています。

いずれにせよ、これだけ変化が大きな現代です。不確かな新しい価値を見出すよりも、過去に置き去りにしてきてしまった価値を見直し、それを今の時代に合うかたちで差し出す「懐かしい未来」がこれから増えていくかもしれません。

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鈴木雄飛
鈴木雄飛

1989年生まれ、2012年電通入社。得意領域は、戦略の設計と、コンセプトやコアアイデアの開発。その他、事業やタレントのコンサルティング、PR・イベント・WEBプロモーションの企画、マス&デジタルのメディアプランニングなど、手法はこだわらずに課題解決に必要な領域に日々チャレンジしています。

鈴木雄飛

1989年生まれ、2012年電通入社。得意領域は、戦略の設計と、コンセプトやコアアイデアの開発。その他、事業やタレントのコンサルティング、PR・イベント・WEBプロモーションの企画、マス&デジタルのメディアプランニングなど、手法はこだわらずに課題解決に必要な領域に日々チャレンジしています。

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