「中核ではなく、境界を見よ」アップル、ホールフーズ、レッドブルを成長させたエッジ戦略

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企業に成長の機会を生み出す「エッジ戦略」

マーケターなら誰もが、ゲイリー・ハメル氏の「コア・コンピタンス」という概念を知っていると思います。ビジネスやブランドを考える際、自社ならではの本質的なコア(中核)を考えるのは当然のことです。しかしながら、中心や本質ばかり考えるだけでなく、周辺や境界から発想することで、意外な発見があるものです。

ボストン在住のコンサルタントであるアラン・ルイス氏とダン・マッコーン氏が書いた 「Edge Strategy」(2016年出版、邦訳未出)という本では、エッジ(境界)からの発想が企業を成長させる機会を生み出す、という考えを展開しています。彼らが提唱する「エッジ戦略」は主に3つから構成されます。

  1. 製品のエッジ:あなたの製品は何を提供して、何を提供していないか。
  2. ジャーニーのエッジ:顧客の目的を求める過程(ジャーニー)からすると、あなたの製品やサービスは、どの部分を担っているか。
  3. 企業のエッジ:あなたの会社が持つ潜在的な資源や能力を、他の顧客や商品として提供できるものはないか。

アップルは製品エッジ戦略で、デジタルデバイスを拡大

製品のエッジには、足し算と引き算があります。足し算とは文字通り、その中核製品と合わせて購入することで、顧客への付加価値が高くなる製品です。

著者によれば、アップルのiPodのようなハードに加えた、iTunesによる音楽ソフトウェアのようなエコシステムやWi-Fi機器、ヘッドフォンなどのアクセサリーが典型的です。2014年時点でのアップル全社の利益割合で見ると、ハードウェアのiPodがわずか1%を占めるのに対して、iTunesを含むソフトウェアの利益はその10倍以上の11%。アクセサリー類も4倍の4%もあります。

スティーブ・ジョブズは早くから「デジタルハブ構想」を掲げていましたが、これは単に関連する商品ラインナップを水平に増やしていくのではなく、それらが有機的につながったプラットフォームを目指していました。この考え方では、ハードに加えてソフトウェアが重要になるうえ、それらがつながることで中核製品の価値を引き上げ、かつ収益をもたらす仕組みになります。この考えはiPodよりも、むしろiPhoneやApp Storeで花開いていきます。

一方で、引き算は一般的には「アンバンドリング」と言われるものです。もっとも端的な例は、洗剤やシャンプーなどでのサイズ違いのボトルや詰め替えパックです。また、旅行やサービス業では、色々なオプション設定をセット販売することです。航空業界のLCC(Low Cost Carrier)は典型的で、機内サービスを提供しない代わり、座席の料金を割安に設定し、追加料金を払えば飲み物を購入できます。

ここでは、座席とサービスが一体化された商品を分解(アンバンドル)しています。引き算の場合は、その中核商品から価値を分けることで、新しい顧客を獲得できることが主なメリットになります。

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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