“拡散の多様性”こそ、ソーシャルキャンペーンの鍵。
さて、ここまで虹色のブランディングが、いかに人、モノ、企業を巻き込んで拡散されたかを紹介しました。しかし、今回の記事でお伝えしたいのは「日本も、いつか同様の議論が起きたら、こうやってみよう」という同性婚に対する姿勢ではありません。
一番、伝えたいのは、ソーシャル時代において、この”拡散の多様性” が非常に重要なキーワードであり、 広告業務において活用できるということです。同性婚にかけて「多様性」というキーワードを使いましたが、簡単に言い換えれば、
- ルールのゆるさ
- ハードルの低さ
- その結果生まれるN次創作の幅
です。
もし、今回のキャンペーンにおいて、特定のアートディレクターによって、より具体的に規定されたガイドラインが存在していたら……。意思表明の画像を生成してシェアできるジェネレータコンテンツが中心にあったら……。このような広がりは、きっと生まれなかったでしょう。
「虹色」という色と「YES」というコピー、それだけで キャンペーンの輪に参加することができる。なおかつ、その最低限のルールさえ守れば、大きな余白の中で 個性を表現したり、遊んだりすることもできる。このゆるさから生まれる”拡散の多様性”は、近年のソーシャルトレンドを見返しても効果が実感できることでもあります。
例えば
・「#彼女(彼氏)とデートなうに使っていいよ」が、著名人のみならず一般人に広がったのは、インスタ映え写真のためにお金と時間を使うことなく、超日常の切り取りに#ハッシュタグをつけるだけでコンテンツになったから。
・「#クソコラグランプリ」が定期的にTwitterトレンドを賑わすのは、高度なレタッチ・合成技術を必要とせず、むしろ下手であることがネタになるから。
・「AKB48の恋するフォーチュンクッキー」や「逃げ恥の恋ダンス」が爆発的に広がった理由。それは、振り付けというルールはあったが、その振り付けが非常に簡単であったこと。下手でも参加できるし、むしろ下手が可愛いという価値になったから。
“インスタ映え”という言葉が、流行語にノミネートされた2017年。企業、そして一般のインスタ女子たちは、「いいね!」を獲得するために、そのノウハウやトレンドを研究。そして、美しく、クオリティの高い、しかしどれも似通った1つの「正解」に時間とお金を消費しています。
それも1つの拡散戦略です。しかし、その一方で全く別の広がり方があるということを忘れないことが、重要だと感じています。 ゆるいルールの中でアメーバのように広がっていく”拡散の多様性” 。決して全ての「質」は高くありませんが、それを凌駕する「量」を生む可能性がそこにある。両方の視点を持っていれば、どんな状況下においてもターゲットといっしょにソーシャルキャンペーンを構築することが、可能なのではないでしょうか。