「よそ者の視点で見れば、地域は発見の宝庫」田中淳一インタビュー

自虐ではなく地元に誇りを 「すごい鳥取市」キャンペーン

鳥取市「すごい!鳥取市」Webサイト

地域のキャンペーンを企画する際に気を付けているのは、こちらの考えを押し付けないことです。「今はこういうものがいいんです」や「このくらいやらないと目立ちませんよ」ということは極力言いません。

一時期、自治体の自虐ネタが多く登場しましたよね。確かに全国からは注目されるかもしれない。けれど、地元にいる方は、実は結構寂しい思いをしていたりします。目立たなければいけないけれど、地元のプライドを損なってまでやることはない。そのバランスには非常に気を使っていますし、地元の方に積極的に参加してもらえるフォーマットにするように心がけています。

2014年に開始した「すごい!鳥取市」は、鳥取市のブランディングキャンペーンです。「鳥取県にはスタバはないけど、日本一の砂場(スナバ)はある」とかつて平井伸治県知事が言って話題になりましたが、地元の方々も、特に若い人ほど「ここには何もない」と言うんです。ならばということで、一番最初に提案したのは「なにもない市鳥取市」だったのですが、さすがにこれは怒られて(笑)。そこから、逆に自分たちですごいところを見つけようという発想で「すごい!鳥取市」を企画しました。

鳥取市民とワークショップを通じて見つけた市の魅力100点をWebサイトで紹介する企画なんですが、「何もない」と言っていたのに、実は掘り起こしていくと色々なネタが出てくるんです。よく、地域のいいところを尋ねられると、「食べ物がおいしくて、風光明媚で、温泉があって」…と地元の方はどこでも同じようなことを言います。けれど、枝葉末節に入っていくと、その地域の独自の面白さが見つかるんです。カメラマンは浅田政志さんで、浅田さんは地域が大好き。街の人の中にすっと入っていって、明るい表情を撮るのがとてもうまい。その抜群の演出力もこのキャンぺーンの大きな力になっています。

鳥取市公式フォトガイドブック『すごい! 鳥取市 100 SUGO! BOOK』
2年目には「すごい!鳥取市」のネタを書籍化し旅行者が持ち歩けるガイドブックに。

次ページ 「商品はコモディティ化しても 地域はコモディティ化することがない」へ続く

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