中学生が考えた「続・桃太郎」に驚かされる
「授業を作りましょう」とは言ったものの、もちろん経験はない。そこで、まずは谷本さんに現状の学校の授業が抱えている課題をヒアリングすることから始めた。ここから「対話的な学びの中で考えを深める授業」「多角的に物事を捉えるオープンエンドなあり方の道徳の授業」など、いくつかの指針を得た。
授業は、チームで議論し合えるワークショップ型にすることにした。桃太郎の「現在」「過去」「未来」を題材に、50分の授業を全3コマで構成した。
1コマ目の授業は、「他者の視点を持ってみよう」がテーマだ。まず、皆が知っている桃太郎のお話をサイコロ型の教材を使って確認し、そこに後から「鬼太郎」というキャラクターを登場させる。鬼の子どもの立場から見た時、桃太郎のお話は本当に「めでたしめでたし」なのだろうか、と問いかけるものになっている。
2コマ目の授業は、「選択肢を増やしてみよう」がテーマ。物語のいくつかのシーンで桃太郎が違う行動を取っていたら?と考えていく。例えば、桃太郎がおじいさんおばあさんから、鬼の素行の悪さを聞くシーン。ここで桃太郎は鬼退治を決意するが、他の選択肢はなかっただろうか?とグループで話し合っていく。
3コマ目では、全員が小説家になったつもりで「続・桃太郎」のストーリーを書き発表する。生徒からは「鬼による反撃があり悲劇が繰り返される」というストーリーや、「鬼に農業を教えれば村を荒らしに来ないので、農具を鬼が島に持っていく」など、「よくぞ考えた!」と驚かされるアイデアもあったという。
他の中学校にも授業が広まる
山﨑さんやアートディレクターの小畑茜さんは、授業で使う様々なクリエイティブツールを制作し、並行して谷本さんが学習指導案を制作した。教育と広告の専門性を掛け合わせたことで、これまでにない授業が生まれた。
この授業は、その後岡山県の別の中学校でも実施された。そこから朝日新聞の社会面や天声人語に取り上げられ、全国からも問い合わせが寄せられるようになった。この2月には、東京都港区立の中学校でも実施される予定だ。この授業を全国にもっと広めるための方法を、チームで考えている最中だという。
スタッフリスト
- 企画制作
- 博報堂+谷本薫彦+think the earth
- C
- 山﨑博司
- AD
- 小畑茜
- 企画
- 谷本薫彦
- アドバイザー
- 永井一史
- PR
- 上田壮一、笹尾実和子