【前回コラム】「京都をリサーチ&プランニングするということ」はこちら
関西でかたちラボという屋号でコピーライターをしている田中です。今回、登場していただくトランクデザインの堀内康広さんが拠点としているのは、神戸の“端っこ”である「垂水(たるみ)」。聞きなじみがなく、神戸といえば三ノ宮のイメージが強いかもしれません。というか、三ノ宮ですら地名を聞いてもピンと来ないかも・・・。「神戸」という大くくりで語られてしまう中、“ 端っこ ” の垂水でデザインカンパニーを立ち上げた理由、そして地方で戦うために必要なこれからの仕事の仕方をお聞きしました!
トランクデザイン 堀内康広さんの場合
今回、「関西で戦う。クリエイターの流儀」に登場していただくのは、神戸・垂水を拠点にしている「トランクデザイン」の代表兼デザイナーの堀内さんです。
堀内康広(トランクデザイン)
印刷会社で勤務後、2008年に独立。2009年より社名を「トランクデザイン」とし、以降、デザイン制作はもちろん、地場産業の産地で戦う方々と一緒に手がけるプロジェクトや自社ブランドやショップを展開しています。
今回お話を伺った堀内さんは、1981年生まれ。田中の2歳上で、40歳を目前に仕事に対して再び向き合う年齢でもあると思います。これからクリエイターとしてどう戦っていけば良いのか?そんな田中にとっても切実な未来の課題について、堀内さんの仕事や取り組みをもとにお聞きしました。
産地の方々と一緒に戦うという精神
堀内さんの特徴はデザイナーとしてつくって、売るところまで関わるということ。そのスタイルが生まれたきっかけには、地場産業のデザインに携わり、職人をはじめ産地で戦う方々と一緒に取り組んだ「hibi」というブランドの立ち上げが大きかったそうです。
hibiは播磨のマッチと淡路島のお香という2つの神戸を代表とする産地を掛け合わせたブランド。商品は国内で150店舗以上、海外で20ヶ国以上での取り扱いがあるなどビジネスとしても成功しています。
—hibiのように産地で戦う方々と取り組む上で大切にしていることって何ですか?
堀内:まずは僕が果たしている役割についてお話ししますね。「産地・編集・流通」の三位一体になっていると思います。「編集」というのは、マッチや包丁といった昔からある産業や工芸品を今の時代に使われるものとしてデザインすることです。
昔から、売れるか売れないか分からないものにデザイン費としてお金をいただくことに違和感がありました。つくって、あとは知らないでは無責任だなと。
だからこそ、産地で戦う職人の方々と協働する体制づくりや、国内外で販路開拓の流通サポートをしていくのも、自分たちの仕事だと捉えています。
—となると、堀内さんは相当シビアに戦っていますよね。
堀内:もし依頼があったら、僕らが関わったら予算としてこれだけ必要ですというのは当然として、生産体制や年間の売り上げ目標は?など商売をやる上で大事なことをどこまで考えられるかを問いますね。
ものを作ることには責任が伴いますし、これだけ世の中にものがあふれているのに新しいものを作るべきかもすごく考えます。もしかすると、それは製品ラインナップの整理だけで良いかもしれない。ものをつくるよりも、メンテナンスや別のサービスを展開した方が、より多くの人たちに使ってもらえるかもしれないし。だからこそ、つくって売るところまでを必死で考えて実行しています。