承認欲求には4つのタイプがある
加藤氏は、「人によって異なる、ソーシャルメディアにおける行動の背景にある心理・思考を明らかにしたいと考えた。デジタル化が進み、ソーシャルメディアが多くの消費者に浸透したことで、『承認欲求』は一般化・多様化しているのでは」と、今回の調査を実施した経緯を話した。
調査では、ソーシャルメディアにおける「承認欲求」にフォーカス。「承認欲求」を、自分の投稿を見た人に対して「いいね!、コメント、拡散などのアクションを期待する心理」と定義し、その強さやベクトルを定量的に計測した。その結果、消費者の行動に影響を与える「承認欲求」は4つのタイプに分類できることがわかった。以下、企業からの効果的なアプローチ方法とともに紹介する。
【リア充アイドル】
承認欲求が最も強く、ソーシャルメディアを最も頻繁に利用。いいね!やコメント、拡散などの「数」を重視する。
全体の24%を占め、10〜20代の比率と、Twitter・Instagramの利用率が最も高い。企業発の情報にも、比較的ポジティブ。
→企業からの効果的なアプローチ
彼らが求める世界観を理解し、その実現をサポートできるようなインフルエンサーの活用、非日常的な体験の提供が効果的。
【ミーハー社交家】
承認欲求は強いものの、ソーシャルメディア上で分別のある行動をとる。
趣味が同じ人や、その世界で一目置かれている人など、特定の相手に承認されることを好む。
全体の24%を占め、全年代のバランスが良く、Facebookの利用率が最も高い。
→企業からの効果的なアプローチ
鮮度が高く、ユニークな情報を提供することで、「情報通」としての優越感を満たすのがポイント。
いち早いレビュー記事や、文化人による評論記事などを介してブランドをアピールするのが有効。
【議論系オタク】
承認欲求は弱いものの、趣味や好きなことに関する投稿は活発に行う。
情報感度が高い人が多い。全体の10%を占め、男性の比率が最も高く、Twitterをよく利用する傾向がある。
→企業からの効果的なアプローチ
彼らのアンテナに引っかかるコンテキストを把握し、彼らと目線を合わせて、深くて豊富な情報を提供する必要がある。
しっかりと情報を伝えられる長尺の動画やブログ記事などが有効。
【協調的フォロワー】
承認欲求が最も弱く、ソーシャルメディアの利用には最も消極的。
狭い人間関係の中で、周囲に気を遣いながら生活しており、ソーシャルメディアでも身近な人の役に立つ情報を発信したいと考えている。
全体の43%を占め、40~60代の割合が最も高い。
→企業からの効果的なアプローチ
お買い得情報など、彼らのコミュニティ内で役立ちそう・喜ばれそうな情報を提供すると、アクションに結びつきやすい。
ただし、興味・関心を確実に捉えないとブランドを毀損するリスクがある。押し付けがましくないアプローチが肝要。
加藤氏は調査結果を踏まえ、「承認欲求」がソーシャルメディア上の行動に与える影響として、
- ①年齢が若いほど「承認の数」を、年齢を重ねるほど「承認の相手」を重視する。
- ②年齢が若いほうが複数のソーシャルメディアアカウントを利用し、承認されやすい自分(=素敵な自分)と承認されにくい自分(=人に知られたくない自分)という複数の人格を使い分けている。
- ③10・20代にとってTwitterとInstagramに求める承認欲求は異なる。前者には「素の自分」を、後者には「特別(よそ行き)な自分」を認めてもらいたいという欲求を持つ。
などを挙げた。
加藤氏は、「2011年には150種類ほどだったマーケティングテクノロジーだが、現在は5000種類とも言われている。こうした中、顧客接点、そして顧客データが断片化し、顧客の姿を正しく捉えられていない企業も少なくない。顧客チャネルを統合し、多様化・複雑化する消費者行動を理解した上で、パーソナライズしたコミュニケーションを実行することが不可欠だ」とあらためて強調した。