生活に密着した視点で企業姿勢を伝える
― 2000年代になると、環境をテーマにした企業広告も目立ちます。
中森:エコが世界的に注目されるようになって、環境を無視した商品づくりは、もはや考えられない時代になりました。私が担当した、環境に対する姿勢を表した新聞広告シリーズも、商品をつくる段階からムダなエネルギーを使っていないこと、それは地球環境のために必要なことであり、企業の使命でもある、ということをリアルな写真とコピーでしっかりと読んでもらえるようなデザインを心がけました。
弘兼:商品にまつわる環境の取り組みや考えを、生活に身近なエピソードを通じて伝えた広告ですね。
中森:環境への配慮は今に始まったことではなくて、パナソニックの原点である二股ソケットも光の量を適正にして無駄をなくそうとしていた。そのことを訴えた「節電60年」という広告も印象に残っています。
― 企業姿勢を表す代表的な場として正月の新聞広告があります。最近ではアスリートの起用もありました。
弘兼:2015年の正月広告は「この世界をワンダーに。」のコピーとともに、サッカーのネイマール選手が登場してますね。ネイマールといえば、世界的にはまだ無名だった頃に、ブラジルのパナソニックがいち早く広告に起用していました。『社長 島耕作』の取材で現地に行ったときに、「絶対に有名になるから」と教えられましたが、そのとおりになりました。
中森:オリンピックやパラリンピックへの協賛も含めて、スポーツへの支援は、平和で明るい社会をつくるために貢献する、というパナソニックの姿勢を印象づけるのに役立っていると思います。これからも、世界各地でコミュニケーションをされるにあたり、こうした活動をより深めていってほしいと思いますね。
― 企業広告の役割や今後については、どのような考えをお持ちでしょうか?
弘兼:経営の効率化が求められると、企業広告にお金を投じにくくなりますが、ブランドに対する信頼を得るという大きな役目を担っています。パナソニックは積極的に企業広告をしてきた会社。社会への貢献を表明することで、イメージづくりに確実に貢献してきたと思います。
中森:広告には、商品や企業を伝え、経済を支えると同時に、文化でもありメディアの活性化に役立つという大きな役割もありますね。広告が元気だとメディアも元気になり、社会にも潤いを与えるわけですから。
弘兼:そうですね。一方で、例えば復興支援のように、マスメディアを通さない社会貢献活動も出てきていて、企業ブランドを高めるコミュニケーションは様々な形があると思います。
中森:取り上げるものにしても、地球環境問題をはじめ、高齢化や少子化、医療や介護など、今の時代に欠かせない大きなテーマがいろいろとあります。これからの新しいパナソニックの活躍に期待は高まります。
弘兼:メディアの使い方やテーマは時代によって変化しても、自社だけでなく社会も栄える、共存共栄を目指す、という企業の意志を、これからの100年も伝え続けていってほしいと思います。
100年先も「日に新た」
1918年に創業した松下電気器具製作所は、名をパナソニックと変え、今年100周年を迎えました。
高度経済成長や震災といった激動の時代を経てもなお、社業を続けられたのは、お客様のご愛顧のおかげに他なりません。第1号の商品であるアタッチメントプラグは、お客様により便利に電気を使っていただき、くらしを豊かにするためにつくられました。
現在は、家電・住宅・車載・BtoBなどの分野で、お客様の「より良いくらし」を広げ、「より良い社会」を支えていくため、進化を続けています。現在の「A Better Life, A Better World」のスローガンは、創業者の「事業を通じて生活の向上に貢献する」という思いに通じます。100年の間に言葉や手法は変わっても、目的は同じ。お客様のくらしのために、日に新た、止まることなく進んでいく。それが、これからも変わらない、パナソニックの原点です。
企業宣伝年表
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