みんな同じでみんないい?
もちろん、いろいろな人種を出演させればいいという単純な問題ではありませんが、「違う価値観や、異なる視点を互いに尊重しながら刺激し合う環境から相乗効果を生み出すこと」 が多様性を取り入れる本来の意義であるとしたら、もう少し冒険的な描き方もあったのかもしれません。
ゴレンジャーの原作者でもある石ノ森章太郎先生の「サイボーグ009」。
人間の多様性とヒーローがテーマの不朽の名作です。今となっては絶対に、地上波ではオンエアできない設定ですが、あれを差別的だと排除してしまう感性こそが、ダイバーシティの本質を見えにくくしているのではないでしょうか。
分野は違えど、昨今のメディアを取り巻く環境に息苦しさを感じている同じ制作者としての個人的なエールです。
作品そのものを揶揄しようという意図はまったくありませんし、「キュウレンジャー」が子どもたちにとって相変わらずの大人気シリーズであることに間違いはありません。
一部で話題になった、あのエンディングテーマ「キュータマダンシング」。
制作者の方々のマグマのように溜まりに溜まった鬱憤が爆発したに違いありません。父ちゃんも母ちゃんもおっタマげる「タマしいの叫び」に溜飲が下がる思いでした。
ダイバーシティとヒーローマーケティング
女の子に絶大な人気を誇るアニメに「プリキュア」シリーズがあります。
このシリーズが始まるきっかけが「女の子だって暴れたい。」という、性差を超えた潜在的なニーズの発見だったとされているのは有名な話です。
戦闘モノだけど、「カワイイ」とか「キラキラ」とか肝心のツボは外さない世界観と、世相を色濃く反映させた戦いのテーマ設定など、ターゲットのハートの掴み方が抜群にうまい。
属性の差に平等に配慮することだけをお役所的に推進するのではなく、ターゲットとする当事者の繊細な感情と、リアルな欲望に同時に応える絶妙なセンスが、これからのヒーローに求められる条件なのではないでしょうか。