—平井さんと田中さんは「地域の仕事」を手がけている点では共通していますが、平井さんは「地元で地元の仕事をする」、田中さんは「軸足は東京において各地域の仕事をする」というように、関わり方のスタイルが異なります。「地域の仕事」は、どういうふうに関わるのがいいのでしょうか。それぞれのスタイルの、良さや難しさはありますか。
田中:POPSのオフィスは東京・原宿にあるのですが、 僕は普段、週の半分は東京にいません。地域は、僕から見ると恵まれていて、せっかく良いものがあるのに、地元の人が気づいていないことが多い。逆に、「そんなものを取り上げてどうするの?」というものも、実はすごく多いんです。
外の人の目を入れることで、「そういう面白みもあったんだ」「こういうものに自信を持っていいんだ」という気づきを、地域の人に与えることができる。同時に、地元のクリエイターと組むことを通じて、僕らも刺激を受けることができます。
地元でやるか、東京にいながらにしてやるか。一概にどちらがいいということはなく、両者が混ざり合っていくことが心地良い、面白いと感じています。
—田中さんは、地元のクリエイターだけでなく、住民とともに何かをつくることも多いですね。
田中:一時、自治体プロモーションにおいて“自虐”のアプローチをするものが増えた時期がありました。話を聞くと、そういうものを見て、実は地元の人が悲しい思いをしていることもあるのだと知りました。
僕は、どんなに目立つものでも、地元の人が首を縦に振らないものは、あまりやるべきでないと考えています。新しい見せ方、打ち出し方の扉を開けてあげることは大事ですが、目立つだけではダメです。
平井:地元で地元の仕事をする良さは、クリエイターが、その企業やブランドを“自分ごと”として知っていることだと思います。例えば「青柳ういろう」も、僕は小さい頃から知っていました。
デザインの仕事は通常、商品知識や市場環境などのインプットから始めるものだと思いますが、そういうものを何となく肌で感じ、理解している状況からスタートします。
大和屋守口漬総本家も、一般的な説明としては「100年以上続く老舗」です。しかし「かつては名古屋土産の定番だったけれど、徐々にその存在感が弱まってきている」という課題も、地元にいるからこそ、肌で感じることができました。その課題感を持って、打ち合わせに行くことができるのは、強みと言えるかもしれません。