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マーケターなら誰もが知っている“一丁目一番地”のフレームワーク
マーケティングの世界には、いろいろな概念やフレームワークが存在します。マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)や、それを消費者視点で解釈し直した4C(Customer Value、Customer Cost、Convenience、Communication)などは、マーケターであれば誰もが知っている“一丁目一番地”のフレームワークでしょう。
ちなみに今、「フレームワーク」という言葉を使いましたが、「4P」や「4C」などは英語では「ツール」とも表現されます。実際にマーケティング課題を解決し、ビジネスを成功に導くための「道具」だからです。
要するに「フレームワークは使ってなんぼ」ということですが、皆さんは、この「4P」ないしは「4C」を、実際の業務で「ツール」として活用したことがあるでしょうか。経営陣にマーケティングの「4P」を使った資料でプレゼンをしたり、上司にマーケティングの「4P」を使った企画の提案をしたことがあるでしょうか。
その答えは「否」ではないでしょうか。それもそのはず、このフレームワーク、今日における宣伝部やマーケティング部の業務の実態には全くそぐわないのです。
「4P」のほとんどがマーケターのアウト・オブ・コントロール
なぜ、業務の実態にそぐわないのか。その理由を考えていきます。
例えば、「4P」の中のひとつ、「Place」について考えてみましょう。アップルは家電量販店の中で自社商品を販売する際も、他のメーカーと横並びのVMD(Visual Merchandize)を許さず、消費者のブランド体験を厳密に管理しています。「販路(Place)」はある意味では広告以上に重要なブランドのタッチポイントであるがゆえですが、日本のメーカーでこのような視点でチャネル開発を考え実行しているところはほとんどないでしょう。多くの場合、販路は営業部門が営業の文脈で管理しているため、マーケターにとってそれはアウト・オブ・コントロールということになります。
他の「P」はどうでしょうか。「Product」に関しても、研究開発部門が主導していたり(少なくともマーケティング部門との協業だったり)して)、商品開発がマーケティングドリブンで進められることは決して多くはありません。
「Price」は全社の利益目標が大きく影を落としていたり、営業部門との密度の濃い調整が必要だったりします。例えば、新しいビジネスであるeコマースについて、「コミュニケーションのみならず、『4P』全てをECに向けて最適化しなくてはならない」と主張するような場合、実際の業務にこの「4P」を活用することができそうです。しかしこれはもはやマーケティングの話ではなく経営のアジェンダで、要はEC部門の全社に置ける位置づけ自体を再考することに繋がるわけで、このような提案が“日常的に”行われるとしたら、それはすなわち組織編成がデタラメであることを意味します。