林 裕幸氏(横浜DeNAベイスターズ) x 松村大介氏(ジェイアール東日本企画)
事業面でも、顧客満足度向上のための施策を積極的に展開してきた。地元横浜市との関係性も深まっている。地域に密着した球団として歴史を重ねる横浜DeNAベイスターズが目指すものとは何か。
ターゲットのペルソナを共有することで生まれる施策の統一感
松村:DeNAが経営権を引き継いでから、どんなことを意識して球団運営に取り組んできたのでしょうか。
林:私たちはコーポレートアイデンティティとして「継承と革新」を掲げています。
この言葉通り、球団が歴史を刻んできた横浜スタジアムやピンストライプのユニフォーム、応援歌「熱き星たちよ」といったものを引き継いできました。前身となる大洋ホエールズ時代から培ってきた、残すべきものはしっかりと引きつぎ、次の時代に繋いでいきたいと思っています。
一方で、自分たちの活動を単にプロ野球の興行としてだけではなく、球場をひとつのコミュニティとしてとらえ、街も巻き込んでにぎわいをつくっていきたい。先例や固定概念にとらわれず、革新的な活動に取り組んでいます。
何を継承し、何を革新していくのかを考えるときに、ひとつの基準となるのがDeNAグループのミッションでもある「デライト」というキーワードです。ファンや地域の皆様など、私たちのステークホルダーに対して喜びやいい意味での驚きを与えられるかどうかという観点で、球団に関わるスタッフが共通認識を持って判断しています。
松村:アクティブサラリーマンをメインターゲットにしているのは、「ベイチケ」というチケット購入システムや球団公式アプリといったサービスを導入したことによって集められたデータと関連性があったのでしょうか。
林:球団を引き継いだときには、誰が来場しているのかといったデータはありませんでした。そこで2012年や2013年頃は、満足度でチケット代が変動する「全額返金!?アツいぜ!チケット」や「ファミチケ100万円VIPパック」などの企画チケットを販売して、世の中の話題になることをとにかくやってみようというフェーズになりました。
これに並行してデータを蓄積する仕組みを構築していました。蓄積されたデータを基に、チケットをご購入いただいた方やファンクラブの入会者でもグラフィック分析、パネル調査やインタビューなどによる定性分析をした結果、最も増えている層、いわば施策に反応している層、球団へのエンゲージメントが高い層をアクティブサラリーマンとして、メインターゲットに設定しました。
「ベイチケ」でもデータは取れていたのですが、「BAYSTARSアプリ」でスマートチケット化したことによって、チケットの分配動向までわかるようになりました。単純な購買データだけではない情報もうまく蓄積していけば、今後、いろいろなアプローチができるのではないかと期待しています。
松村:ターゲットが定まったことで、サービスの方向性も打ち出しやすくなりましたか。
林:これまでは、球場内の演出やBGMの選曲、グッズの企画など、各事業部がそれぞれの意図で組み立てていたのですが、目指すべき一つの柱ができました。ペルソナも設定したので、全員がターゲットをイメージしやすくなったと思います。
アクティブサラリーマンは野球観戦の際に、同僚や子どもを含む家族、野球にあまり関心のない恋人といった周りの人を“誘って”訪れることが多いので、その周辺にいる方々についてもペルソナを設定しました。
お問い合わせ先
株式会社ジェイアール東日本企画
総務局広報部
TEL:03-5447-0974