基礎医学が分かっていても、臨床医学に理解があるとは限らない!?
この「4D」というツールは、上記のようにまず大きな方向性を定義して、担当割りをした上でプロジェクトを立ち上げるのにも使えますし、まずは担当割りだけをしてプロセスごとに詳細を検討してもらい、その検討結果を後で取りまとめるのにも活用できます。
また新商品ローンチ時のマーケティング計画策定のみならず、あらゆるキャンペーンプランニングにおいて、検討事項の抜け漏れと部署を跨いだ作業の冗長化を防ぐのに活用できます。既存の商品であっても、「Design:価値の定義」パートの再確認や、場合にとっては見直しを行う必要がありますし、販売促進のキャンペーンは多くの場合「Distill : 価値の蒸留」パートとの連携を考慮する必要があります。その意味では、すべてのキャンンペーンにおいて定型的にこの「4D」の整理をすることを、部内のルールにしても良いでしょう。
マーケティングフレームワークは使ってなんぼ。それを「ビジネスマンとしての教養」で終わらせないためには、学術的で一般的な理論の体系を、業務のリアリティーに即した実務の体系に翻訳していく必要があります。
医学には病気の発生メカニズムを科学する基礎医学の体系と、どう診断しどう治療するかという臨床医学の体系があります。膵臓のランゲルハンス島β細胞に問題がありインシュリンがうまく生成されない、という糖尿病発生のメカニズム(基礎医学)が分かっていても、実際に糖尿病の患者を診断し治療する手順(臨床医学=実務の体系)に理解があるとは限りません。生産実務の体系化は大得意な日本企業ですが、このようなマーケティング実務の体系化については、これまであまり関心を示してきませんでした。
しかし、世界に目を転じると、消費財企業を中心に独自のマーケティング実務体系と実務のフレームワークを持っている企業が競争を勝ち残っており、それらを開発する能力は、商品がコモディティー化しブランドがビジネスの雌雄を決する現在において 日本企業がすべからく身につけるべきでしょう。