大手SIer 企業の日本ユニシスは、2011年に専門部隊「ユーザビリティ&デザインセンター(2015年からUXデザイン室)」を立ち上げ、その重要性を社内に啓蒙するとともに、企業にサービスデザイン導入の支援サービスを提供している。
“ユーザー視点”も併せ持った 日本ユニシスのエンジニア集団
「システムの機能は充実しているが、操作が難しくて使い勝手が悪い」。これは、日本ユニシスがシステム開発の領域で『人間中心設計』に取り組むきっかけとなった顧客の意見である。
「機能や技術ばかり重視していては駄目だとの考えから、約10年前からユーザー視点で設計する『人間中心設計』を追求し始めました」とUXデザイン室長の香林愛子氏は語る。
「サービスデザインの導入はまだこれからで、その方法を模索している企業が多いよう」と話すのは、同室担当マネージャーの小林誠氏。同社は約10年の間に経験、知見をガイドライン化して知財活用するほか、教育コンテンツをつくり人材育成にも力を入れる。
その成果として、同社にはサービスデザインの発想を持つ「ユーザビリティエンジニア」が多数誕生している。
一般的にサービスデザインの導入では、テクノロジスト・デザイナー・コンサルなどがチームを組むケースが多いが、日本ユニシスの場合は『人間中心設計』の発想を持つエンジニアが、開発から完成後の評価や改善まで手掛ける。「我々にはお客さまの理想を形として実現する知識や技術力があります。そこが当社の強みです」(香林氏)。
部門を超えて社内が一体化 ワークショップを支援
「サービスデザイン」とは具体的にどのように設計するのか。
「例えばサイトを立ち上げる時、まずどんなコンテンツにしようかと考えがちですが、サービスデザインの視点では、なぜそれを立ち上げるのか、どのような成果を出したいのか、そこを明確にしてから、フィールドワークやインタビューで現状を把握・分析し、ユーザーの具体的なペルソナを作成します。そこから、そのペルソナに合うシナリオを描きユーザーのUXを最大化したサービスを体系的に組み立てます」(香林氏)。
特に同社が注力するのが「ワークショップ型」の支援だ。ある地方銀行のケースでは、日本ユニシスと行員でプロジェクトチームを立ち上げ、フィールドワークやインタビューを行い、体験ストーリーを設定して、アプローチから最終形まで一緒につくりあげた。
香林氏が強調するのは「我々の役割はコンサルではなく"ファシリテーション"にある」ということだ。クライアント社内で関係各所をすべて集めたチームをつくり、そのメンバー全員が当事者意識を持って活発な議論を行えるようにサポートする。
「ワークショップ型支援は合意形成や当事者意識の醸成に非常に有効です。全員が目的に向かうと、他部署への理解も進み、チームだけでなく社内全体にまとまりができて、利用者を理解することにつながります」と香林氏。導入企業の評価も高く、「継続して相談を受けるケースが多い」(小林氏)。
社内がまとまりノウハウまで取得できるなど、メリットは多いが、「サービスデザイン」と聞くと、どのように相談を持ち掛ければよいか悩む人もいるかもしれない。
「ユーザー視点に立ったサイトの評価診断なども行っていますし、何をしたらいいかわからないという相談でもいいので、気軽に声をかけていただければ」と小林氏。
昨年、同室ではCMS部隊を統合しコンテンツ運用まで含めたプランニングが可能になった。「当社の技術面での強みと、お客さま自身の強みをうまく融合させ、顧客価値視点でビジネスを組み立てたい。皆がハッピーになる豊かな世界を目指したいと思います」と香林氏は今後の展望を語った。
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