スタンプラリー化する消費時代に、コンバージョンは希薄化する

膨大に増加する体験の中で、希薄化する「コンバージョン」

高速化するトレンドの移り変わり。SNS発信欲求によるスタンプラリー型の一回きりの消費。そして、「とりあえず消費」を促すサービス。このような状況の中で、私は、いわゆる「コンバージョン」はインパクトが希薄化すると考えています。ここでは一度、「コンバージョン」とは消費者の一連の購入体験だと考えましょう。

私たちは、流行の一つとしてその商品を買うかもしれませんが、それは膨大に増大したトレンドアイテムの一つであり、その購入体験は一週間後には忘れてしまっています。そしてその消費自体も、様々なサービスを利用して、気軽に行われたものなのです。私たちにとって、その「買う」という行為に対して、大きな思い入れはない。

SNSと消費の距離が縮まり、「バラマキ施策をしてでも、Instagramで沢山レビュー投稿をアップロードされたい!」「とにかくTwitterバズがほしい!」という煩悩に悩まされる人も多いのではないでしょうか。しかし、私が思うに、その一瞬の最大風速は、消費者の脳みその中で占有率がどんどん小さくなっています。もちろん、対象の人生を変えるバズはあるけれど、人生に小さなスパイクを作るだけのものも数多くある。

私は経営学部卒なので、大学でAIDMAやAISASなどの消費者行動モデルを勉強しました。AIDMAがActionを最後に置いていたところから、AISASがActionからのShareを最後に置くようになったように、「Action」はすでに終着点ではありません。そして、ActionからShareさせるために頭を捻るようになったように、ActionからShareさせた体験をどう活かすかが今後は大事になってくるように思います。

SNSでバズることを狙うのはもちろん効果的ですが、その先にある、「バズからたまたま手に取った人たちに、次に何を感じてもらうか」ということをより長い時間軸で想像できたなら、そのアイテムはもっと未来まで誰かのそばにいれるのではないでしょうか。

大切なのは「手に取る」体験から何を知ってもらうか想像すること

インスタ映えできるカフェに行って、大人気のパフェをInstagramに載せたところで、来月にはそのパフェのことは覚えていても、そのパフェのお店の名前はすっかり忘れている私たち。だけど一方で、トレンドの嵐に翻弄されながら、「あれ、このお店また人気になっている」ということに気づいて興味を持ってみたり、Twitterでバズっているから商品を試してみたけど、思ったより他の商品も良かったし、何よりブランドのストーリーに惹かれた、なんて体験をすることもあります。

私たちはSNSに乗せられて、様々な商品を試してみたりする。様々なサービスの恩恵を受けて、実際にその商品を手に取った上で、最終的にこれからも日常のそばに置いていくかを決めることができる。

SNSでたまたま見かけてもらうことだけでなく、流行のアイテムをフリマアプリでとりあえず手に入れてもらってみたり、サブスクリプションサービスの中にサンプル商品が入っていたりして実際の商品を手に入れてもらうことは何よりもブランドのタッチポイントとなるはず。

こんな時代だからこそ、私たちは「手に取ってくれた体験から、消費者に何を伝えるか」を考えてくれているモノに心惹かれるのではないかと思います。「手に取る」体験の演出と、「手に取った」先に素敵な未来を魅せてくれたなら、私たちはトレンドの嵐から救出され、「お気に入り」という小さな定住地で穏やかに消費を続けることができるはず。

流行の濁流の中で楽しく踊りながら、そんな小さな出会いと、その出会いによる発見を、私たちは日々切望しているのかもしれません。

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りょかち
りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。SNSに自撮りをアップし続ける「自撮り女子」として注目を浴びる。現在では、自撮りのみならず、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。SNSに自撮りをアップし続ける「自撮り女子」として注目を浴びる。現在では、自撮りのみならず、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。

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