「72時間ホンネテレビ」の企画の裏側(ゲスト:キングコング西野亮廣)【後編】

テレビタレントとクラウドファンディングは相性が悪い?

澤本:西野さんは自分がやりたいこととテクノロジーを掛け合わせてやってるじゃないですか。でも、その西野さん自身はテレビ大好きですよね。だからテレビに対する考え方を聞きたくて。

西野:僕、お友達に角田陽一郎さんっていらして、角田さんがおっしゃっていて本当にそうだなと思うことがあって。僕、去年アジアを回ったんですが、アジアはむちゃくちゃ未来が来てるんですね。一歩目がインターネットで、ネットを邪魔する力がないんですよ。ベトナム、タイは超未来で、あれを見てから日本に戻ってきたときの田舎っぷりがすごかったんです。日本はネット弱いんですよね。

中村:そうですよね。

西野:テレビはあんなに少ないチャンネルのものがこれだけシェアしてるって、世界どこ探してもないんです。

澤本:ないですよね。

西野:以前、僕は新しいことをしたい、これからはグローバルだと思ってたんですけど、ちょっと待てよと。日本は田舎なんだと。日本という超田舎国の資産はやっぱりテレビだと。テレビが圧倒的で、これを潰しちゃダメだと思って。逆に、テレビぐらいしか世界で勝てないと思うんです。そうなったときにテレビ超面白いと思って、今興味ありますね。

澤本:僕は自分の仕事がそうだからテレビは保護しなければいけないと思っていて。保護というと言い方悪いけど。

西野:おっしゃる通りだと思います。

澤本:基本的にテレビについては「いい、いい」と言い続ければよくなると思ってるんですよ。

西野:はい、さらにもう1つ面白くするのであれば、テレビのシステムは見事なので、頑張らなければいけないのはテレビタレントですね。タレントはテレビに出られないと生きていけないという、お給料の体重を全部テレビに乗せてしまっているので。極端に言えば、タレント全員が僕たち私たちはテレビに出なくてもいいですよ、という状態を、つまり外で給料をちゃんと稼げていたら、その条件ではできませんと、番組、スポンサーに対してちゃんと交渉できるようになるので、頑張らないといけないのはタレントとタレント事務所ですね。

権八:テレビを面白くする、という話では、西野くんの著書『革命のファンファーレ』の中に人気タレントと認知タレントの違い、信用と好感度の違いなどが書いてありますが、そのあたりを「信用と革命の西野さん」にぜひ。

西野:ツイッターのプロフィールが信用と革命のキンコン西野ですから(笑)。

権八:僕はこれにとても共感したわけ。つまり、テレビはまずいもの食べてもおいしいと言わなければいけないなどあるじゃないですか。

西野:あれ難しいですよね。テレビタレントはクラウドファンディングの勝率めっちゃ悪いんですよ。とにかくテレビタレントはクラウドファンディング、ことごとく失敗してるんです。

中村:へー!

西野:有名になったら集まりそうなのにイメージ違いますよね。テレビタレントとクラウドファンディングの相性ってすこぶる悪くて。クラウドファンディングで勝とうと思ったら、押さえておかなければいけないことが2つあって、1つはお金とは何か?という問いに対して答えなければいけない、もう1つはクラウドファンディングは何か?という問いに対して答えなければいけないんです。

結論から先に言うと、お金は信用ですね。信用を数値化したものがお金であると。クラウドファンディングは信用をお金に両替するための両替機であると。つまり、クラウドファンディングはお金を集める装置ではなくて、両替機であると。そうすると、クラウドファンディングで勝とうと思ったら、やらなければいけないことは信用を集めることなんです。

じゃあテレビタレントがクラウドファンディングの相性悪いとなったら、テレビタレントに信用がないという話になるじゃないですか。

澤本:はい、なりますね。

西野:結論は「ない」んです。なんでテレビタレントに信用がないかというと、タレントの給料の出所はスポンサーで、スポンサーが番組の制作費払って、その一部がタレントさんに行っているので、この仕組みではどうしてもタレントが求めないといけないのは好感度なんです。

つまり、まずいものを食べてもおいしいと言わなければいけない。そう言わないと好感度が下がっちゃうし、扱いづらいタレントになっちゃうから。まずいものを食べてもおいしいと嘘をつかないといけないのは、10年前はよかったんです。その嘘が嘘かどうか確かめる術がなかったから。

澤本:うん。

西野:でも今はツイッターで「あれ、この間食べたけどまずかった」とつぶやいた人のフォロワーが10万人いる可能性もあれば、100万人の人にリツイートされる可能性もあるし、ぐるなびでも書かれると。つまり、今は嘘が嘘としてバレるようになってしまったんですね。

澤本:確かに。

西野:そのままテレビに出続けちゃうと、認知を得ること、みんなが知ってるタレントになることはできるけど、その裏で信用を失っちゃうんです。認知は獲得できるけど、人気は下がっちゃう。今、世間一般で言われている人気タレントのほとんどは認知タレントです。みんなが知っているというタレントで、人気タレントと言える人はごく一部です。

ひとたび認知タレントが不倫なんてしまうと、スポンサーは離れるし、広告収入がなくなったら、認知タレントはダイレクト課金ものの活動をしていかないといけないんですけど、ライブをしてもクラウドファンディングをしても、そのときは人気がないからお金が集まらない。という手詰まりになっているので、ここはちゃんと向き合わないといけないかもしれないです。

澤本:テレビに出てるけど、人気タレントっているんですか?

西野:テレビに出なくてもいい人は人気タレントです。たとえば、ベッキーとゲスの極みで言うと、人気タレントはゲスの極みです。彼はクラウドファンディングしてもお金集まるし、ライブしても人が集まる。彼はテレビに出なくてもいいんです。

グルメ番組でまずいものをおいしいと嘘をついて信用を落としちゃうという話ですが、じゃあその人が嘘つきかというと、それは雑な感じがして。その人は決して嘘つきではなくて、空気を読んで、そうしたほうが番組は盛り上がるし、スポンサーが喜んでくれると、嘘をつくわけじゃないですか。普段、その人は嘘をつかないわけです。

ここから何が読み取れるかというと、嘘は感情でついてるわけじゃなくて、環境によってつかされているということです。僕たちは基本的に嘘をつきたくないんだけど、嘘をつかざるをえない状況に追いやられたときに嘘をつくと。すると、嘘をつかないようにするためにはその状況に身を投じちゃダメです。だからテレビにしか出られないという状況は嘘をついてしまうので、出なくても大丈夫ですよと。たとえば桑田佳祐さんは絶対にOKですよね。

中村:なるほど。

次ページ 「72時間ホンネテレビの企画の裏話を披露」へ続く

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