大型ロックフェスに勝つ方法。そのヒントは、市民力にあり。
「ITAMI GREEN JAM」は行政の理解はもちろん、市民の方々から愛されている音楽フェス。来場者の半分が子どもと一緒に楽しむファミリー層で、約1割がなんと60歳以上のシニア層だといいます。2017年はスチャダラパーや竹原ピストルが出演した一方で、若いアーティストやミュージシャンたちのお披露目の場にもなっています。大原さんに「ITAMI GREEN JAM」の独自性や可能性についてお聞きしました。
—少し聞きづらいのですが、開催までのお金ってどうされているのですか?
大原:基本は自己運営資金です。ただ、フェスが開催される前に支払うお金って意外と少ないのです。例えば、チラシやポスターの印刷費や備品費など。それ以外は基本全て後払いなので、前払いの資金に関しては当日の出店費用などでまかなえます。来場者数はもちろん、企業やさまざまな団体からのスポンサーやコラボレーションが増えた中でインフラ整備や警備問題に対して、今はシビアになっています。ソフト面を整えて、フジロックやサマソニに勝ちたいんですよね。
—大型ロックフェスに勝つ手段ってあるんですか?
大原:やはりポイントは市民力だと思っています。伊丹市内外問わず、「ITAMI GREEN JAM」を楽しむ2万人の方々が自分ごとと感じ「何かしらの関係者」として参加してもらいたいです。主催者も演者も出店者も行政の方もお客さんも横並びで。それはフジロックやサマソニにはできないことだと思います。今でもお客さんたちの中で、そのような「市民力」があって自然と譲り合ったり、マナーも含めてとても良い評価をいただきます。とはいえ、規模を考えると警備や環境整備にはもっと力を入れる必要があるのは事実。まさに今、関西フェス主催者たちと話し合いながら注力している部分です。
—最後に。ライバルだと思っている音楽フェスってありますか?
大原:ライバル視というよりも、こんな感じで落とし込みたいと思うのは「トヨタロックフェスティバル」です。同じ無料フェスで演者も尖っていて、市民をうまく巻き込んでいるフェス。何よりも、最寄駅と会場の間に商店街があって、フェス当日は勝手に各店舗が「屋台」を出して盛り上げています。主催者がお願いをせず、市民ということで屋台を出してイベントを盛り上げ、同時にそのことが「広告」にもなっているのが面白いです。
「ITAMI GREEN JAM」は僕のものではありません。みんなのものだ、と思って欲しい。だからこそ、市民の方々の力をもっともっと活かせるきっかけとなるようにしたい。2018年の「ITAMI GREEN JAM」はもちろん、「ITAMI GREEN JAM」をどんどん進化させていきたいです!
—お話ありがとうございました!当日、遊びにいきます!
取材を終えて〜田中が今日から実践すること
「市民(地元民という意味ではなく)」」であることが参加券、つまりチケットとして機能し、ある人は勝手にお店を出して、ある人は勝手に表現をする。もしかすると、勝手に警備をしてくれる人も出てくるかも。そういった意味でも「ITAMI GREEN JAM」には、音楽フェスの新たな可能性を感じました。お客さんは仲間。これからの時代、フェスはもちろん、ビジネスにおいてもこの関係づくりはとても大事だなと感じました。
著者プロフィール
田中裕一(かたちラボ・コピーライター)
広告制作プロダクション勤務を経て、2012年に大阪・兵庫など関西を中心に展開するクリエイティブカンパニー「かたちラボ」を設立。関西のクリエイターと協働して、企業ブランディングやCI構築、事業計画立案、紙ものやWEBサイトなどの制作を行う。
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