前田考歩
ハリルホジッチ監督の解任はサッカーファンのみならず、多くの日本人に驚きとショックをもって迎えられました。本大会2ヵ月前の解任劇。これは、新サービスのローンチや製品の納入を2か月後に控えたタイミングで、プロジェクトマネージャーが解任されるということですが、こうした事態はビジネスなどでも起こり得ることです。このニュースを見て、自分もこのようにして解任、降格されるかも知れない。あるいは逆に解任を言い渡さなければならないかもしれない、と感じた方も多かったのではないでしょうか。
解任理由についてはすでに様々な解説がされており、ここではそれについて触れません。ここで考えたいのは、「プロジェクトマネージャー(以下、プロマネ)の採用、任命」についてです。
新規事業プロジェクトに取り組む際、想定通り進まないことが常態であるプロジェクトにおいて、そのプロジェクトマネージャーの任命は、それ自体一つの重要なプロジェクトであると言っても過言ではありません。
外部から招聘、採用するのか。社内から任命、抜擢するのか。あるいは社長自らが陣頭指揮を執るのか。その採用・任命時の基準は何か。採用する場合、そもそも自社に来てくれるのか。自社の社員の特性やカルチャーに適応できるか。あるいはそれらを一段階上のレベルに引き上げたり、因習を壊したりしてくれるか。そうした希望やビジョンを採用広告や転職エージェントを通じていかにわかりやすく、魅力的に提示するか。などなど、考えなければいけないことは多様です。
今回の解任を考えるためには、前回2010年の南アフリカW杯まで遡る必要があります。当時の日本サッカー界のビジョンや状況、制約条件から、どのようにしてハリルホジッチ監督を招聘したのかということがわかってきました。そこからプロジェクトマネージャーの採用、任命の教訓を得ることができると考え、拙著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』で提唱する「プロジェクト譜(以下、プ譜)」を用いて、プロジェクトマネージャーを採用、任命する上での教訓を引き出します。