40~50代の男性をターゲットにしてきた「おとなの自動車保険」だが、新たなアプローチ先として「ママ」に注目。その施策と意外な結果について、セゾン自動車火災保険マーケティング部 中島文平氏と浅川梨恵子氏、「MAMADAYS」編集長 宮下ゆりか氏とエブリー ライフスタイルカンパニー 今津友里氏に聞いた。
契約者の7割が男性 新たな顧客層として「ママ」に注目
浅川:「おとなの自動車保険」は、年齢ごとの事故率を保険料に反映した自動車保険です。車のディーラーなどが仲介する「代理店型」ではなく、ネットなどを通じて直接顧客と契約を結ぶ「ダイレクト型」の保険で、主なターゲットは事故率が低く保険料が割安になる40 ~ 50代。昨年からは新たな取り組みとして、事故の際にボタンを押すとすぐに事故受け付け担当者に相談できたり、ALSOK隊員のかけつけを要請したりすることができる「つながるボタン」のサービスも提供しています。
中島:自動車保険の契約者の約7割は、男性です。「仕組みがわかりにくい」「車を買うときに同時に検討する」といったことが要因で、契約の意思決定を男性がすることが多かったのです。そこで必然的に男性をターゲットにしたコミュニケーションを行ってきました。しかし、一般的には家庭の中で女性が財布を握っていることの方が多いはず。「ママ」に自動車保険を検討してもらうことはできないか?と思い、ママたちへの強いリーチ力を持つ「MAMADAYS」さんに動画制作を依頼しました。
浅川:「おとなの自動車保険」は、割安な保険料で「家計に優しい」「節約できる」という強みがあります。家計を握るママには、この「節約」というワードが響くのでは、と仮説を立てていたのですが、実際にやってみると、思わぬ結果が表れたのです。
「節約」より「つながる」? ママが潜在的に抱えていた不安とは
宮下:社内のママたちにヒアリングを行いつつ、「MAMADAYS」ならではの切り口で3案ほど企画案を提出し、話し合いながら動画制作を進めていきました。
「MAMADAYS」の視聴傾向から、ユーザーの関心を引きやすい動画のポイントは2つあることが分かっています。ひとつは、動画のタイトルや展開の中でしっかり商品訴求をすること。もうひとつは、ママたちが共感しやすい・自分ごと化しやすいシチュエーションを盛り込むことです。
「つながるボタン」のサービスは、名称そのものがサービスの内容を表していて魅力的ですし、頭に残りやすい。さらに、毎日送り迎えや買い物で車を利用しているママたちにとって「子どもを後ろの席に乗せて事故に遭ったらどうしよう?」という不安は、男性以上に切実で自分ごと化しやすいのではないかと考えました。そこで、社内のママたちにも反響の大きかった「事故にあった方のうち『自分は事故に遭わないと思っていた』という人の割合は93%」というデータをフックにして、「つながるボタン」の動画を制作しました。そしてもう1本、「固定費の見直し」という観点から、「おとなの自動車保険」の「節約」という売りをプッシュした動画を制作しました。
浅川:結果、「つながるボタン」の動画の方が再生数・コメント数ともに反響が高かったんです。驚きました。
中島:「つながるボタン」は、きちんと説明すればその良さが伝わる自信がありました。しかしテレビCMなどの尺の短い動画では、その利点がなかなか伝わらなかった。今回も、この尺の中で動画の中でどれくらい伝わるものだろうか、と疑問に思っていましたが、実際に動画を拝見して、これなら伝わるだろうと考えを改めました。
今津:動画の中で「つながらないとき」「つながると」などと、「つながる」という言葉をくりかえして印象づけるなど、細かい工夫をしています。事故が起きたときの「どう対処していいかわからない」・「契約内容がわからない」・「現在地がわからない」といった困りごとに沿って動画を展開したのも、ママさんにとって「ひょっとしたら自分も」と自分ごと化してもらえたのではないかと考えます。