新しいボイスメディアで問われるラジオの属人性
吉田:最近、ボイシー(Voicy)が流行り始めて、去年僕もチャンネルを開設しました。創設した代表の緒方憲太郎さんに話を聞いてみると、今までのラジオ屋とは考えていることがいい意味で全然違うんですね。
嶋:もとは公認会計士の方で、その後ニューヨークでコンサルタントをしたり、日本でベンチャー支援をしたり…と、おもしろいキャリアの人が音声コンテンツ業界に入ってきたと思いました。
吉田:ネットでやるから、リピート率や何分で再生やめちゃったかまで全部データ取れるんですね。そのマーケティングをベースにして考えるから、僕らの持っている常識なんて全然常識じゃない可能性があると。それはもう本当にその通りだなと思いました。例えば「2分しゃべって4分曲を流すのがいい」とか、知ったことかと。
そしてボイシーをやっていて脳が揺れるほど衝撃を受けたのは、僕が尊敬しているメジャーなパーソナリティより、「うーん」と思うような人がおもしろいとされていたりするわけなんですよ。
嶋:評価されるしゃべり手の質が変わってきたってことでしょうか?
吉田:でも、その「うーん」を褒めている人の目線になって考えてみると、よく知らない50代のおじさんが20分うだうだ話しているのを聞かなくちゃいけないなんて、けっこうつらいんですよね。それは、これまでのラジオが持っていなかった視点。ラジオの武器であり、かつ最大の弱点は属人性が高すぎるということだと思いました。その人の文脈を理解していないで、その人の話を聞くってつらいんですよ。その文脈の共有をするために、今ツイキャスで「週刊ラジオ情報センター」という番組をやっているんですけれど。
嶋:なるほど、本来ポテンシャルの高い人がラジオでしゃべっているのに、それがちゃんと伝わってないってことですね。「週刊ラジオ情報センター」は、やきそばかおるさんという、全国のラジオを聴きまくっている人とやられてますよね。全国のラジオ番組を紹介しているのだけど、料理しながら聴くとよさそうな番組とかおもしろい切り口で。まさにラジオの「ながら力」を推奨していて、すごくいいなと思っていたんです。
吉田:ラジオ好きな人でも、実は数人しかパーソナリティを知らなかったりします。でも世の中にはおもしろいパーソナリティが何百人もいる。ミュージシャンやタレントの個性はたくさん把握していても、ラジオパーソナリティの個性は相当付き合わないと把握できないので。彼らの個性を流通させる仕組みづくりではじめたものなんです。