耳市場の奪い合いに効く、CM制作者の技能
吉田:なぜVoicyがつくられたかというと、耳だけは誰も本気でやっていないから“獲れる”ということだったらしいんです。
橋本:そうなんですよ!そこに気づいた人がいた。
嶋:耳市場を奪い合う激戦がこれから始まりますね。
吉田:だからラジオ局の人が「懐かしい」とかでやっていたら大間違いで、まだぎりぎりアドバンテージがあるから今のうちなんです。
橋本:媒体に合わせてコンテンツが変わるのは当たり前なので、そういう意味では変わらなかったら終わっちゃうんだと思います。
吉田:FMの世界でよく言われた「モア・ミュージック、レス・トーク」が変わりましたよね。今は完全にトークが有利になりました。
橋本:音楽を多くかけていたいわゆるFM局も、トーク企画の割合が以前より増えているように感じます。いかに付加価値をつけるかというと、トーク。まさに“耳空いてる問題”です。
嶋:今日は本当に、いろいろと視座の高いお話を聞けました。
吉田:これを20秒にまとめられる人が、CM業界にはいるんですよね。
嶋:そう、私たち広告クリエイターの得意技は結局そこですよね。壮大な年月をかけて開発された商品を、20秒のCMにするというのはそういうことだと思います。
吉田:濃縮して落とし込む技術者がラジオCMの世界にはいますね。その技術は耳の奪い合いになっても絶対にプラスですよ。
橋本:もっと言うと、CM制作者と番組制作者の境目ってそんなにいらないと思う。そこに交流があったほうが絶対によくなるし。
吉田:CMディレクターに番組つくってほしいですよね。昨年ACC賞の贈賞式でCM制作の方々とお会いした時、ラジオ番組をつくったことがあるかと聞いたら全員ないと。ありえない、もったいない!と思いました。昨年シルバーを受賞した毎日放送の「MBSラジオには私たちがいる」(注2)ってありましたけど、あれをラジオパーソナリティはみんなつくるべきと思ったんです。
嶋:パーソナリティのバックグラウンド文脈を伝えるために。
吉田:そうです。それで本当にパーソナリティの魅力がわかる。それが必要なんです。
それで、ラジオCMのディレクターになると今後仕事は引きも切らないでしょうね。
橋本:これからめちゃくちゃ成長していくラジオ業界で、CMだけでなくすべてに対して関わっていける可能性がある。
嶋:新しい聴かれ方をされ始めたラジオ。広告クリエイターがそこでどんなことができるのか?可能性は広がっていると思います。