ダンサーにとっての「カッコいい」って何?
初めまして。
飯塚浩一郎と申します。
広告のクリエイティブディレクター、コピーライターであり、プロフェッショナルのダンサー、振付家としても活動しています。
かれこれ、15年ほどパラレルキャリアを続けているでしょうか。
数年前からダンスが小学校・中学校で必修化され、「ダンス経験者」の数は爆発的に増加しています。
その影響か、ダンスCM・ダンスPVに代表されるダンスを使ったクリエイティブも本当によく目にするようになりました。
世界的にもその傾向があるので、音楽の大きな流れがバンドサウンドから踊れる音楽へ移行していることも原因だと思われます。
それは広告とダンスの両方の世界に身を置く自分としては大変喜ばしいことなのですが、変化が急激であるがゆえか、広告制作者の方々から「ダンスが、ダンサーのことが分からない!」、ダンサーから「エンターテイメント業界でどうやって振舞えばいいのか分からない!」という相談を、日々たくさん受けるようになりました。
当コラムでは、クリエイターとダンサーのズレをできる限り解消し、ダンスとクリエイティブの幸福な関係を築くお手伝いができればと思っています。
前半はなぜそのようなズレが生じるのかという話、後半はダンサーがクリエイティブの領域でどのようにサバイブしていくべきか、自己ブランディングすべきかという話ができればと思っています。
双方にとって有益な内容にすべくがんばりますので、よろしくお願いします。
第一回目は「ダンスにとって『カッコいい』って何?」という問題を取り上げたいと思います。
リズムダンスが義務教育に組み込まれたときに、年配の方から「ダンスなんか無理やり踊らされるなんてかわいそう!そんな時代に生まれなくてよかった」という声が多く聞かれました。
リズムダンスという名称は、ストリートダンスからいわゆるダークな側面も併せ持つストリートカルチャー部分を抜いたということでしょうか。つまりは、ストリートダンス、もっと分かりやすく言えば、ヒップホップダンスです。
果たして、そんなに今の少年少女たちはかわいそうなのでしょうか。
個人的に00年代にたくさんゲームCMを作っていたのですが、時がたつほどに子役の趣味・特技欄に「ダンス」と書かれている割合が増えていきました。
現在どの習い事のランキングを見ても、ダンスは上位の常連。
テレビをつければ、ほとんどのアイドル、アーティストが踊りまくっています。
私がダンスを始めた90年代後半には中学高校にダンス部があることを極めてまれでしたが、いまはダンス部はメジャーな部活の一つでしょう。
時代は変わりました。
ダンサーとして、ダンスが教育的に優れていると思う点は、ストリートダンスは「その人がその人らしくあることが一番カッコいい」という考え方がベースにあるということだと思います。
つまり、男だろうが女だろうが太っていようが痩せていようが背が高かろうが低かろうが若かろうが年を取っていようが上手かろうが下手であろうが関係ないのです。
体力差がある男女が一緒に参加できる、必要とあらば学年をまたいでもできる、保護者も先生も一緒にできるという稀有な存在です。
ということで、踊れないからかっこ悪い、恥ずかしい、ということ自体が本来はありません。(アマチュアでもステージに立つことになれば、また違いますが)
もちろん、どんな授業も嫌がる生徒はいますが、大人が想像しているほど子供たちは踊ることに絶望していないと思いますので、ご安心を。