是枝監督の独特な子役演出法って?
松岡:まず台本を見せないんです。子どもたちは台本を知らない状態です。今回限りのこともあったと思うので、私は今回しか知らないのですが、確か基本的には台本を見せないとおっしゃっていたと思います。
オーディションにうまい子が来ても、「こう言って」と言われたことを言葉に出すのがうまい子と、お芝居がうまい子は別なんですって。今回のオーディションでも怖いぐらいうまい子を見つけたらしいんですけど、「今ここでお母さん呼んで」と言ったときに、そのまんま呼べる子と、お芝居のうまい子は別らしいんですね。
オーディションではうまい子ではなく、素直に言葉が出せる子を重要視しているとうかがって。現場で私達は子どもありの台本をもらってますが、子どもたちは現場で監督から今こうやって言ったからこう言ってと言われて言葉に出すんです。
権八:でも、まさか自分がやってる映画が『万引き家族』とはね。
澤本:そこまで知らないんだ(笑)。
中村:難しいですよね。うまくやっちゃダメなわけだから。うまくやると、それダメとなるわけだから、素の自分の才能しかないわけじゃないですか。
権八:そういう演出の仕方だから、柳楽優弥くんのような子が出て来られるんですかね。
松岡:ちょうどその頃に編み出したっておっしゃってました。「どういう風にこのスタイルになったんですか?」と聞いたら、『誰も知らない』の頃に、このほうがいいぞ、ということがあったみたいで。
中村:松岡さんは目の前にいろいろな作品の公開も控えていて、お忙しいと思うんですけど、今後もし時間があったらこういうものをやってみたい、というのはありますか?
松岡:やりたい役ばかりですけど、今焦ってきたのは学生役ですね。『ちはやふる』では広瀬すずちゃんと同じ歳の役をやらせていただいておりますが、だんだんと制服が生々しくなくなっていくので、まだ制服でお芝居がしたいし、学生というあの魔法のような時間のお芝居がまだしたいから。
澤本:それ同じようなことを言ってる人がいました。その人は20代後半ですけど、もうすぐ30歳になっちゃう。だから今しかできないことをやりたいと思うんだって。僕はこの歳にこれをしなかったらできないという仕事やろうと思うと、制服と思ったと。
松岡:私もおこがましいですけど同じ思いで。いろいろな役やりたいし、逆に今からできる役。やっと最近、お仕事をしている役ができるようになって。
澤本:お医者さんの役やってますよね。
松岡:はい、『コウノドリ』お願いします(笑)。職業の役は新しくてうれしいんですけど、それは今後もできるから。でも、学生役は今だけなので。
中村:聞きましたか、これを聞いてる映画監督、各局プロデューサーのみなさん。
松岡:いえ、もしつくってるものの中に空きがあったら、学生ものをつくってる人の中で、「ここの学生役空いてる!」って思ったら、声かけてください(笑)。
権八:桐島の頃は高校生ですか?
松岡:16歳です。高2ですね。だからアレはもうできないです。
権八:(監督の吉田)大八さんにはちょっとと(笑)。
松岡:違う違う(笑)。『勝手にふるえてろ』は大八さんもメールをくれるほど褒めてくれました。ですが、あのときの何かわからないけど毎日イライラしたり、叫びだしたい気持ちって、最近はだんだんなくなって、生きやすくなってきて。生きにくいと思ったあのときの、肌から何か吹きだしそうな感じはもう帰ってこないから。だから今できる学生役になっちゃいますけど。
権八:あのときしかできなかった芝居が。
松岡:みんなそうだと思います。橋本愛も当時15歳ですし、みんな「今やれ」と言われたら、とてもできないと思いますね。
中村:それで言うとアレは? バラエティ番組で話題になった、アイドル活動は?
松岡:アイドル活動(笑)。私モーニング娘。が大好きでして、ドキュメンタリードラマの最終話でモーニング娘。に私が入るという回があったんですよ。鍛えてダンスレッスンして。
中村:そしたら腹筋が信じられないほどバキバキになって、その後ずっとそれが話題になってたんですよね。
松岡:もう2年前ですけど。
中村:松岡さんの動きのキレ方も半端ないし、腹筋も半端ないし。
権八:そういうアーティスト活動は? 今、首を横に振ってますね。かわいい(笑)。
松岡:お歌は勉強中です。でも、音楽劇が大好きなので、ミュージカルというとプロフェッショナルですけど、音楽を使った劇が大好きだから、いつか挑戦したいと思って練習はしてます。まだまだ人に見せられるものではないので、いずれは。
中村:というわけで名残惜しいのですが、そろそろお別れの時間が近づいてきております。今後の目白押しのご予定をもう1回言ってくださいよ。
松岡:3月3日から26日まで、絶賛登壇中、『江戸は燃えているか』、作・演出が三谷幸喜さんで、中村獅童さんが主演の江戸コメディでございます。その後公開されるのが、『ちはやふる -結び-』。こちらは広瀬すずちゃんが主演のかるた映画の最終章になります。そして4月には『黒井戸殺し』。こちらも三谷幸喜さんと原作がアガサクリスティさんの豪華キャストで放送されます。そして、6月公開予定の『万引き家族』というキャッチーなタイトルで、是枝監督の映画に初めて出ることが叶いました。はじめましての方も、お久しぶりですの方も、これからも松岡茉優をよろしくお願いします。
澤本:『ちはやふる -結び-』面白かった。
松岡:ちゃんと結ばれてましたね。
澤本:結びって大丈夫かなと思ったけど、小泉(徳宏)監督うまくやったなと。
松岡:それすごいことですよね。2年経って、キャストも成長してしまったぶん、期待も大きくなるわけで。みんな不安だったと思うんですけど、そう言ってくれる方がいると、みんなうれしいと思います。
澤本:見ていて、みんな仲良しなのがわかるんですよ。学校のメンバーが完全に仲良いわけ。それが上の句、下の句もそうだけど、今回もすごく仲良く見える。雰囲気出るんだなと思って見てました。賀来賢人くんがかっこいいんだよ。
松岡:シブいですね。
権八:無精ひげ生やしてましたね。それも必見ですね。
中村:ありがとうございました。
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構成・文:廣田喜昭