東京と47都道府県をつなぐ広告
「政府広報であるのだから、生活者である国民が何かしらのベネフィットを感じてもらえるキャンペーンにしていくべきではないかと思いました」と、山本氏。
「例えば、カフェを開きたいと思っている若者が東京では実現できないけれど、地方に行けば安い家賃で一軒家が借りられてカフェが開ける。そういうことが現実にあるわけです。そう考えると、自分の夢を実現する場所は東京ではないかもしれない。もし自分がやりたいことがあるのならば、それが東京以外の違う場所でできるかもしれないと気づかせてあげる。さらにそれに対応する政策があり、補助もあることを知らせてあげる。若い人たちに新しく生きるチャンスを与えること、それこそがまさしく政府広報が伝えるべきことであると思いました」。
これまでライフスタイル誌では地方で自分らしく生きている人たちの生活を紹介したり、タウン誌ではその地域に住んでのよさをレポートしてきたが、5月に始まったキャンペーンでは東京と各都道府県をつなぐことを試みた。人づてに各都道府県から今年、または近年東京にきた人を探し、その人の家族や友人、学校の後輩などに登場してもらい、広告の中で呼びかけてもらった。
「これまでは東京からの発信で、東京と地方がつながって広告されることはほとんどありませんでした。でも、こうやって各都道府県からメッセージを送ってもらうことで、電車に乗っている人たちにも自分の地元を思い出してもらえるだろうし、日本全体が一つになって元気に見えるのではないかと思ったんです」(山本氏)。
写真家 蓮井幹生さんを中心とするチームが47都道府県を回り撮影した。山本氏が撮影に関して唯一ディレクションしたのは、「カメラに向かって笑うのではなく、カメラの向こうにいる友だちや家族に向かって笑ってほしい」ということだ。
「広告には登場していない、呼びかけられている人を本気で心配して、応援している人たちだからこそのいい笑顔をたくさん撮ることができました。東京から地方へ、地方から東京へという一方通行ではなく、“こっちは元気だ。そちらは元気か”とお互いに元気を確認しあえる。そういう広告をつくることができて、よかったと思います」(山本氏)。
「どう生きる?どこで生きる?」47都道府県プロジェクトの47都道府県すべての広告が掲出された山手線ADトレインは6月1日まで、東京メトロUライナーは5月31日まで走行。また、東京駅デジタルサイネージは、5月27日まで掲出される。また、政府広報オンラインでも見ることができる。
スタッフリスト
- ○企画制作/
- コトバ+DESIGNMAN+電通+電通クリエーティブX
- ○CD/
- 山本高史
- ○AD+D/
- 折重慎
- ○C/
- 阿部希葉、中迫智也
- ○D/
- 齋藤ちづか、佐藤勝
- ○撮影/
- 蓮井幹生、井上佐由紀、有高唯之、今井竜也、ワタナベカズヒコ
- ○PR/
- 家山景介、安藤摩紗継
- ○PM/
- 小橋貴裕、志賀亮太、鈴木康平
- ○レタッチ/
- 河村幸
- ○編集/
- 鈴木宏
- ○AE/
- 満行慎一郎、伊藤瑞喜、加藤恵、南誠司、山下洋平