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「メディアガイド」は、博報堂DYグループの社内向け冊子を2015年に初めて書籍化したもの。2018年版は、メディア環境研究所所長の「情報のデジタル化から生活のデジタル化へ」と題したインタビューも収録しています。
コラムでは、本書の編集に関わった博報堂DYメディアパートナーズ社員が、各メディアのトピックを紹介します。
毎年、博報堂DYメディアパートナーズ ラジオ局では新入社員研修の際、彼らに「ラジオを聴くか」と質問をしています。5~10年前は受信機すら見たことがない、ラジオ番組を聴いたことがないと言う新入社員が殆どだったのに、今年は約70%が聴いたことがある、半数が日常的にラジオに接している、と答えたそうです。ラジコ(radiko.jp)、ラジオクラウド*、スマートスピーカー等デジタル分野においてラジオの聴かれ方が拡大する施策が次々に登場し、ラジオに接触するシーン、方法が大きく変わってきたのです。
ラジオメディアはこの2~30年の間「オールドメディア」の認識のもと、聴取率も広告媒体としての評価も厳しくなっていました。デジタル分野が急速に発展しその傾向が加速すると考えられていた中、逆にラジオ自体がデジタル領域との連携を深め、様々なアウトプットを持つことにより生活者がラジオと接触する機会を増やしてきました。
とくに2017年下期から各社がリリースしている、音声対話型アシスタントメディアのスマートスピーカーは、ラジオのみならず音声メディアの可能性を格段に拡げたと考えています。料理をしながら、身支度を整えながらでも、一声発するだけで知りたい情報や音楽などの音声情報を受け取ることができるので、従来、ラジオメディアのタッチポイントとして言われてきた「ながら接触」を生活者や広告主に再認識してもらう絶好の機会になりました。
現代の生活者の24時間は、スマホ、PC、テレビなどの視覚メディアに独占されていて、音声メディアの入る隙がないように感じられます。しかしスマホでニュースをチェックしながら同じデバイスでSpotifyを通して音楽を聴く、PCで作業をしながらラジコでニュース情報番組を聴くなど、聴覚を活用するスペースはまだまだあり、そして将来的にはそこにターゲティング配信を進めていくことで音声広告と生活者との接点が拡がるチャンスがあると思います。
また音声だけで伝えるラジオメディアだからこそ、デジタル領域のビジュアルインターフェイスを補完メディアとして活用するビジネスモデルも活況です。ラジオコンテンツと各種アプリビジネスとの連携も増えてきており、情報の補完、相互送客等ビジネスの可能性はどんどん拡大しており、今後もデジタル領域の発展に呼応して、ラジオメディア、音声メディアのビジネスの可能性も拡がっていくと考えています。
ラジオ局 ラジオ部
矢島久美子
広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2018
博報堂DYグループ各社で長く使われてきた、メディアの広告ビジネスに携わる人のためのデータブック。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の出稿広告主ランキング、ネット広告の種類・効果指標、ターゲット別 メディア接触状況など、各種情報が詰まった「今すぐ使える」1冊。デジタル領域はページ数を増やし、昨年以上に内容を充実。今年は、メディア環境研究所所長が「情報のデジタル化から生活のデジタル化へ」と題して語ったインタビューも収録。