女性のインサイトを捉えたヤッホーブルーイングの“観察力”【前編】

『水曜日のネコ』が捉えたインサイトの4要素

大松:改めてインサイトとは何かというと、「人を動かすための隠れた心理」です。いわゆる氷山の一角に例えられるもので、顕在化されている意識は5%、95%の無意識が人の行動を司っています。

このインサイトを明らかにしていくために4要素を定義しています。それは「シーン」「ドライバー」「エモーション」「バックグラウンド」の4つで、これらの要素を捉えるとインサイトが見えてきます。また、この要素はアイデアにつながるインサイトの基準でもあります。

大事なポイントは、「エモーション」だけが人の感じ方の問題なので主観。それ以外は、客観的な事実になっていることです。深い「感情」と「事実」をセットで捉えることがインサイトにおいては重要です。でないと事実に基づかない“いい加減インサイト”から“いい加減アイデア”が量産されてしまいます。

この話の流れでお聞きしたいのが、稲垣さんが関わったヒット商品の『水曜日のネコ』と『僕ビール、君ビール。』の場合、インサイトをどう捉えたかです。ぜひ教えてください。

ヤッホーブルーイング 稲垣聡氏

稲垣:『水曜日のネコ』の開発は4~5年前で、当時はインサイトという言葉を正確に理解していませんでした。そうした中でこの商品は、市場機会をどう見つけるか、から出発しています。

当時の弊社はEコマースが中心でしたが、女性のお客さまがかなり多かったです。イベントでも同様で、女性向けのビール需要は確実にあると考えていました。

もうひとつは競合の状況で、いわゆるホワイトエールの製品がいくつか出ていました。飲みやすく女性にも人気ですが、弊社のラインナップにはありませんでした。『よなよなエール』というフラッグシップ、『インドの青鬼』というものすごく苦いビール、『東京ブラック』というものすごく真っ黒なビール、と男っぽいビールを3つ並べていたんです。

そこで女性がビールを飲む機会を深く知れば、クラフトビールの裾野を広げることができるのではないかと仮説を立てました。ただ、どのような人をターゲットにするか当初は全然決まっていませんでした。

次ページ 「エモーショナルな価値が、新しいポジショニングを生み出す」へ続く

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