今回のマーケティングの芽は、10年前にあった
藤崎:2017年から「アウトドアアンバサダー」による「PRO TREK Smart」の体験プログラムがスタートしたわけですが、堀さんがそもそも「アンバサダープログラム」に興味を持ったきっかけは何ですか?
堀:私がSNS施策を手がけるのは、これが初めてではありません。実は2008年に前職でTwitterを用いたマーケティングの走りを経験していました。当時、IT情報ツールが商材でしたので、インターネットを使った施策は相性が良いはずですが、あまりに先駆けすぎて、大きな成果は出せませんでした。ただ、当時からSNSやクチコミマーケティングなどの「今までのマスマーケティングとは違う取り組み」に強い関心を持っていたことは事実です。
そこから長らく経っていましたが、当時、一緒にTwitterの施策に取り組んだ方が、今はファンやアンバサダーを重視するマーケティングをやっていると知って、今回の件を相談しました。
藤崎:いいお話ですね。要は今回の取り組みは、10年前の挑戦の現代版というわけですね。
堀:はい。昔、私が行ったこと施策の発展型だとは思いも寄りませんでしたが。それに、ケロッグやネスカフェといったブランドが「アンバサダープログラム」に取り組んで成功していることは知っていましたが、「PRO TREK Smart」は趣向性の高い製品です。日常品や食品などの消費財と同様に成功できるか自信はありませんでした。それでも懐かしさもあって、思わずアジャイルメディア・ネットワークさんに連絡していました。
藤崎:それが今回の「アウトドアアンバサダー」との連携につながったというわけですね。実は私も堀さんと同じで、マス広告の仕事をしていましたが、ブログの登場やクチコミマーケティングなど、個人の発信に興味を持ち、いろいろ試し始めたのが2006年、そして2008年は日本の広告会社を辞めた年です。今、堀さんのように新しいマーケティングを指揮している人には、当時からマス広告に対する疑問を持ち、新しい方法を模索してきた人が多いと思います。
堀:もちろんマス広告にはマスの役割と良さがあります。ゼロにするとかやめるといった考えではありません。ただ、マスメディアの広告で一方的に言われても、どうしても「一歩、引いて見てしまう」ことってありませんか?「広告が良く言うのは当然だけれど、本当にそうなのかな」と。
藤崎:わかります。誰しも広告は広告と割り切って見ていると思います。
堀:一般的にマス広告でのブランド・アンバサダーという存在は、ブランドのシンボルやアイコンとなる存在です。その道のプロやタレントなど、著名人の方に広告へ出演いただいたり、記者発表会やイベントで登壇していただいたりします。
ただ、すでにブランドとして認知されている商品・サービスでは有効だと思いますが、今回のような未知の製品は、「プロには使えるかもしれないけど、私のような一般人には使いこなせないかも」という感想で終わってしまう可能性が高いと思ったのです。
藤崎:必ずしも有名人や影響力が強い人、インフルエンサーからの話でなくても、情報に信頼性があれば、一般のユーザーに受け入れてもらえる時代ですよね。
堀:はい。「自分と同じ生活者、一般人の目線で話している情報だからこそ、信頼される時代」になっていると思います。