製品ではなく、特定ジャンルのファンから参加者を募るという方法論
藤崎:そこでプロやタレントではない、ファンに着目した「アンバサダープログラム」をやってみようとになったのですね。
堀:はい。しかし課題もありました。一般の方々からファンを集めて「アンバサダープログラム」をやりたいけれど、使っている人の絶対数が少ない状態では、アンバサダーを募るのは難しいのではないかと。つまり、そもそもプロダクトがまだまだ知られてない状態なのです。ところが、アジャイルメディア・ネットワークで、ジャンル別のアクティビティのアンバサダーを率いる試みが始まったと聞き、これは良さそうだと思いました。
藤崎: ファンベースマーケティングの考え方として、「ブランドごとでファンを募るアンバサダープログラム」に加えて、「ジャンルごとのファンに着目したマーケティング」があります。例えば、スポーツで言えば、特定のチームのファンと、特定のスポーツそのもののファンがいます。今回の事例は、アウトドア好きという人たちに着目した後者の方法論ですね。
堀:はい。アジャイルメディア・ネットワークが運営している「アウトドアアンバサダー」というファンカテゴリーに登録している人たちに着目しました。ここに登録している人たちはアウトドアが好きで、SNSやブログで情報発信に熱心という条件があります。
こういうファンカテゴリーを上手に活用するのも、これからのマーケティングには重要だと思っています。一般の人ですが、ある特定の趣味や興味の対象があり、ちょっとだけ発信力が高い人というイメージです。例えばフォロワーの数でいうと、Twitterで数百人程度で、多い方でも1000人くらい。これは、「自分たちと同じ目線」で語ってくれる人としては最適な立場だと思います。
つまり、フォロアーが多ければいいというわけではないということです。タレントや単なるインフルエンサーではない点がポイントです。あくまでも一般の人で、同じ趣味や興味を持つ人に対して説得力があり、信頼に足る情報を伝えてくれる点が企業にとって一番の魅力です。
藤崎:少しだけ解説すると、「アウトドアアンバサダー」は、今回のような「アウトドア向けの時計」だけに興味があるわけではありません。アウトドアのアクティビティ全般に興味がある人たちの集まりです。登山をする人もいれば、サーフィン、スキーが好きな人もいる。もちろんそれぞれ情報発信力があり、大好きなアウトドアの分野で何か良い物があったら積極的に使いたいという意欲の高い人たちです。
堀:そうですね。例えば、従来のターゲティングマーケティングであれば、購買者の属性は雑誌ごとに分かれていました。でも、そうした専門誌でその道のプロが製品についてレビューしても、一般の方は、自分のための製品だと感じづらいのでは、と思うのです。
藤崎:「アウトドアアンバサダー」という概念は、ネット上でバーチャルなジャンル雑誌が編集されているようなものだと思います。
堀:そうですよね。主役は同好の士というのが面白いですよね。