制約がクリエイティブを生む
前田:ここにプ譜があるんですけど。何かプロジェクトを始めようとした時って無限定なんですよね。計画するだけだったら、本当は制約は何もないはずなんです。なんだけれども、その無限定な状況から拘束条件を作らないと前に進まないんですよね。
小倉:そうなんですよ。そうなんです。
前田:その拘束条件っていうのが、今ヒラクさんがおっしゃった地域の風土や人材もあるでしょうし、慣習や価値観みたいなものもあるでしょうし。生々しい話をすれば予算も当然あるでしょうし。本書ではここ(廟算八要素)にその要素を列挙するという外在化の仕方をしています。
小倉:僕が今作っているラボは、結論から言うと、ブドウ畑の中にオフグリット型のコンテナが浮いてるって状況になったんですね。それも今のところですが。でもそこにたどり着くまでの発想というか、成り行きに全部、自発性がないんですよ。
前田:自発性がないとは?
小倉:新しい菌を見つけたい。でも大学とか研究機関に所属してないし僻地に住んでるから、全部自分の敷地でやりたい。たまたま山梨に100坪くらいの土地が余っていたので、そこにどうやったらラボを作れるかということを考えました。そのうち、気密性がないと安全性に問題があるということがわかって、コンテナが一番予算がかからないのでコンテナにしました。ちなみに予算でいうと、僕の『発酵文化人類学』の印税が予算の上限になる(一同笑)
で、そこの中でやれることを最大まで考えると。工務店とか設計士にガッツリ頼むと予算がオーバーしちゃうからDIYになる。それで、せっかくだったら研究するためのインフラも外に頼りたくないから、電気はオフグリットにしようということになって。電気をオフグリットにするためには、電力をいっぱい使うから断熱と遮熱をしなければならない。冬は断熱すると結構あったかくなるんだけど、夏の遮熱が躯体だけだと難しい。
どうしようかという時に、グリーンカーテンがいいんじゃないかとなって。じゃあここは日本一のブドウの産地だぞと。ぶどう棚作って全面グリーンカーテンにしたら遮熱できるんじゃないかと思って友達に相談したら「100坪ぐらいだったらブドウの木5本で全部覆いつくせるよ」って言われて、「え、ブドウってそんな伸びるの!」って初めて知って。今6本くらいブドウの苗木もらったんですけど、3年経ったらそれがブドウの海原になる。で太陽光パネルだけがそこから出てるみたいな状態になる予定です。
そんな風に、僕最初はイメージ全然できてないんですよ。緩い目的だけがあって。今持っている予算と制約条件のなかでどうやってそこにたどり着けるか、1マス1マスやっていくうちに全体ができてくるっていう状態です。
前田:まさにこの本に書いてある、プロジェクト工学の第3法則「プロジェクトの過程における諸施策の結果もたらされる状況は、即座に次の局面における制約条件となり、ときにプロジェクトの勝利条件そのものの変更すらも要求する」が当てはまるのではないでしょうか。
小倉:そうですね!僕の場合、これの繰り返しですべてできてるっていう。
前田:でも、そこに手詰まり感があるかと言うと、全然そんな印象は受けないんですよね。ブドウの木でグリーンカーテンを作るというのも、土地の制約に縛られているというよりかは、いくつか選択肢はあるんだけれども、拘束条件をうまく生かしてそうしてるっていう風に聞こえるんですよね。
小倉:客観的に見ると、ラボをつくるつもりが畑作っちゃってるんですよね。でもそういうのも含めて面白いなと僕は思っています。
下記にてお申し込み受付中!
https://www.sendenkaigi.com/event/detail.php?id=14419
日程:2018年05月24日(木)19:00~20:00
場所:宣伝会議東京本社8F
書籍案内
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』(3月29日発売)
ルーティンではない、すなわち「予定通り進まない」すべての仕事は、プロジェクトであると言うことができます。本書では、それを「管理」するのではなく「編集」するスキルを身につけることによって、成功に導く方法を解き明かします。