未来となるのは、ひねくれていない素直な技術
暦本:技術には、“筋の良さ”というのがありますよね。「無理がない」「素直である」といった本質的な筋の良さのようなもの。クリエイティブとかイノベーションというと、目先の変わったものをつくろうという傾向があるけれど、筋が悪ければいくら広告でおしても一過性で終わってしまいます。素直で筋の良いものは、「まだ来てはいないけれども、未来はきっと使っているだろうな」というもの。そこに道をつけてあげることになるので、ある意味素直なものの方が未来だと思う。
近山:めちゃくちゃわかります。
暦本:ストレートに「いいな」とわかる。それは重要だと思います。クリエイティブって変わったものにしなければということではなくて、素直にシンプルに考えていただければ。応募される方は、作品に対して「これは素性がいいだろうか」と考えてみていただけたらいいと思う。
近山:わかりやすいですね。iPhoneが出てきた時、地図を指でこう拡大できるんだ、わかりやすい!ということがあった。
暦本:目先が変わったのではなくて、これが当然で、今までがひねくれていたと気づかされましたね。これがあればこんなに素直になれるんだ、というのが実は本当に未来だと思う。
鈴木:そうですよね。足が悪くなったら、足を動かしたいですよね。それが今までなんでなかったんだろう、と思います。
暦本:それですね。一番素直な気持ち。今まで無理をしていたんだと気づかされるのが最良のイノベーションですね。
鈴木:車いすは椅子にタイヤをつけたもの、という常識があって、ペダルは必要ないとされてきた。ビジネス分野でプロの人が見たら、そうですよね。それは必要ないと2600年決めつけてきた。先生が言うように、ゆがんだ常識です。本来はおかしいのに、それが当たり前になってしまっていることはほかにもありそうですよね。
暦本:そもそも論で考えると、なんでこうなっているのかということ。
鈴木:そこに本当にクリエイティブやイノベーションがありますね。