ポップコーン型とぬか床型
小倉:思いもしなかったものが結果的に良い成果につながる、という意味では、発酵的にはぬか床がそれに当たります。ちょうどこの間、情報学者のドミニク・チェンさんとお話ししていた時にプロジェクトには「ぬか床型」と「ポップコーン型」がある、という話になったんですが……
前田:ちょっと説明してもらえますか(笑)
小倉:はい。ポップコーンって、トウモロコシの種(材料)をフライパンに入れて、熱を加えたらはじけて実が出てきます。つまり、インプットとアウトプットがすごくはっきりしているんです。
一方でぬか床型って、要素が多くて複雑で、ちょっと制御不能なんですよね。その野菜を漬けて、最終的にどんな味になるのかは誰にもわからない。でもその分からなさがすごく面白い。だからぬか床は味わいがある。
僕はインプットとアプトプットが単純に結びついていないものを作りたいという思いが常にあります。メンバーが戸惑うくらいのものができると、いままでの価値観ではそれが良いのか悪いのかも評価できない。そうすると、価値観自体のアップデートを迫られることになります。本当に面白いものって、そのようにして生まれるものだと思っています。
前田:そうですよね。
小倉:この話をもう少しスケールさせると、いま私たちの社会に必要なのって、拡大再生産のクリエイティビティじゃなくて、ものさし自体のクリエイションだと思うんです。そう考えると、エンジニアリング型はすぐ拡大再生産に行ってしまうので、ぬか床型の発想をもつことがこれから必要なのではないかとおもっています。