環境をコントロールする 「プロジェクトメンバー=微生物」論
前田:僕がヒラクさんの『発酵文化人類学』を読んで思ったのは、プロジェクトのメンバーって、ぬか床とかにおける細菌とか微生物と同じだな、ということで。彼らを、プロジェクトマネージャーたる自分が、うまく発酵が起きる環境を作ってあげて、なにか悪いものがあったら取り除いてあげて、って言う具合に進めていく。
小倉:まさにその通りで、実は発酵においては、菌自体をコントロールすることはできないんですね。じゃあどうすればいいのかと言うと、環境をコントロールするしかない。発酵物を作る時って、大きく「仕入れ」「仕込み」「手入れ」3つのプロセスに分けられるんですけど、この中で一番プライオリティが高いのは「仕込み」、すなわち環境づくりなんです。この「仕込み」をしくじると、その後の「手入れ」のコストと手間が膨大になってしまう。
企業のプロジェクトを見ていると、みんな「手入れ」のことばかり考えてる。予算とメンバーを投入した後に、どうやってうまく回すか、とか。それは発酵的に言わせてもらうと、イッツ・トゥー・レイトなんですよ(笑)
日本の会社の偉い人たちは、マネジメントは「いかに管理するか」ということだと思ってるけど、その前の「どう定義するか」の方が大事なんです。「何日までにこれをしなさい」とか「これはしてはいけない」って出口を狭めるのではなくて、「何のためのチームなのか」「どういう風にメンバーが楽しむのか」という定義を先に決めておけば、不測の事態はリスクではなくなります。
前田:プロジェクトマネジメントの文脈で言うと、マイクロマネジメントしないということになるんでしょうか。
小倉:そうですそうです! 逆に言うと、その定義にめちゃめちゃクリエイティブ力が試されるんですよね。マイクロマネジメントしないようにするには、「どうやったらみんなが一番楽しく仕事ができるか」ということを本気で考えないといけませんから。
前田:よくアクションより前に、ミッション、ビジョンがあると言いますよね。確かに日本の企業は、そこが弱いかもしれません。
「発酵文化人類学」×「予定通り進まないプロジェクトの進め方」バックナンバー
今の時代に求められているのは「ものさし自体のクリエイション」である(2018.06.01)
プロジェクトは発酵させよ!「発酵文化人類学」の著者が語るその意外な共通点とは(2018.05.22)
発酵文化人類学ことはじめ〜微生物から見た人類学〜
小倉ヒラク 二回連続講義 前篇『微生物から見た人類学』
日程:2018年6月3日 (日) 13:30〜16:00
場所:青山ブックセンター本店
「人生というプロジェクトをいかに編集するか?」~『予定通り進まないプロジェクトの進め方』~
日程:2018年06月20日(水) 19:00~21:00
場所:蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
書籍案内
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』(3月29日発売)
ルーティンではない、すなわち「予定通り進まない」すべての仕事は、プロジェクトであると言うことができます。本書では、それを「管理」するのではなく「編集」するスキルを身につけることによって、成功に導く方法を解き明かします。