第10回販促コンペ 締切直前イベントレポート「実現した応募企画のポイント解説」

5月31日、宣伝会議本社にて、「第10回販促コンペ」の応募者限定イベントを開催しました。今回は「第9回販促コンペ」への応募企画から、協賛企業が採用・実施した企画の考案者らが登壇。企画の流れなどについてプレゼン。審査員長の嶋浩一郎氏(博報堂ケトル)と、最終審査員の桜田圭子氏(宝島社)らが、 評価できる点や改善点を分析・解説した。(第10回販促コンペの特設サイトはこちら

「販促コンペ」審査員長・嶋氏が着目する、企画の3つの要素

第9回販促コンペの企画者3組のプレゼンテーションに先立ち、審査員長を務める嶋浩一郎氏は、「販促コンペ」審査員の着眼点などを紹介した。

嶋: 「販促会議企画コンペティション(販促コンペ)」は、「ニュートラルな異種格闘技戦」だと考えています。名刺に記された肩書きも、ふだんの仕事も関係なく、アイデア一本で戦える。「提示された課題を解決するために何ができるか」、手段を選ばずに考えるのが、「販促コンペ」です。自分の中の既成概念を取り払い、極めてフラットに企画することが大切です。

審査員は、3つのことを重視しています。まずは「なるほど、そんな課題解決の仕方があったか!」という、いわゆるクリエイティブな「アイデア」です。アイデア自体の新しさ、おもしろさは重視されます。

次に「リアリティ」。「それで人は動くの?」ということです。「本当にその企画で人は動くのか」を突き詰めること。消費者の潜在的なニーズや、インサイトをとらえているか。深く掘り下げてみてください。

最後が「フィージビリティ(実現可能性)」。つまり「本当にできるの?」ということです。大胆なアイデアであるほど、乗り越えなければいけない壁があります。企画にまつわる関連法令などもきちんと参照し、実現できるかを考えてみてください。

アイデアとビジュアルで、ひとめでわかる直観的な企画

さて、トップバッターは、レインズインターナショナルが提示した課題で「思わず牛角を食べたくなる尖った企画」への応募企画。電通テックの五十嵐響介氏と阿部至氏によるもので、企画名は「ニクエスト(ふせん)」。登壇したのは五十嵐氏。

「焼肉をおごってほしいとき」に、”かわいく伝える”ふせんを制作し、さらにふせんを「牛角」の店員に渡すと、1品プレゼントするという企画だ。「第9回販促コンペ」で一次審査を通過した企画が、ふせんではなく「LINE」と動画メッセージにアレンジされ、実現に至った。

五十嵐:このアイデアは、「おごられたい食事ナンバーワンといったら焼肉だよな」と思ったのがきっかけで生まれました。「焼肉をおごってください」という気持ちを、「かわいく」伝えられたら焼き肉を食べる機会も増えるのではないか、そう考えたんです。

これは、上司などにおごってほしいと思っても、うまくそれを伝えられない、伝えられたらいいのに、という私自身のインサイトが根底にあります。ふだんは左脳的に、データやロジックを重ねて企画することが多いので、「販促コンペ」のこの企画では逆に、感情面から考えたのが、個人的な挑戦でもありました。

うまくおごってほしいことを伝える、それを形にしたのが、「ニクエスト(ふせん)」です。おねだりをする「リクエスト」と、「肉(ニク)」を合わせた、おねだり専用ふせん。一般的なふせんと同じように、業務連絡などに使えますが、一枚めくると、「焼肉おごってね」というおねだりが書いてある、シンプルなものです。

「おねだり」の内容は、最初はふせんを使う人に自分で書いてもらおうかと思いましたが、口下手な人もいるだろうということで、いくつかバリエーションを用意しました。このふせんを店舗で渡すと、そこに描かれている焼肉がもらえる、というクーポンのような使用方法も付け加えました。

企画時は、とにかくシンプルであることに心を砕きました。「おねだり専用ふせん」というふうに、アイデアをひとことで言えるのが大事です。あとは口に出したくなる言葉としてダジャレを用いたり、ふせんのデザインをきちんと起こしたりして、アイデアとビジュアルの1点ずつで、ひとめでわかるような企画を目指したんです。

嶋:このふせん、僕のデスクに貼られていたら、焼肉を食べに連れてっちゃうなと思います。ふせんをデザインして見せたのもいい。これを見ると、自分がどう動くか、SNSに写真が投稿されそうだなとか、想像させる力があります。

直観的でシンプルな企画ですが、そういった企画のほうが考えるのは難しいんです。実は高度なアイデアだと思います。

焼肉店が上司と部下の会話を生み、コミュニケーションの場になるというのも、レインズインターナショナルにとってはいいブランディングですよね。

桜田:「お寿司をおごってください」はなかなか言いづらいですが、焼肉はお祭り感があって、おねだりしやすいというのはいい着眼点だと思います。

また、手書きもポイント。最近は手書きの機会が減り、逆に「字を美しく書きたい」というニーズが生まれていて、美文字の本が売れていたりします。そんなトレンドもとらえていると思います。

一方、マーケティングを実施している広告主企業としての立場からすると、このふせんを、どうやってターゲットに渡すのか、が気になりました。街頭サンプリングをするとなれば、配布場所を考えたり、コストを計算に入れなければなりません。

また、おねだりした結果、「牛角」以外の焼肉店に行ってしまう可能性もありそうだなと感じました。

次ページ «説明なしで「きっと人が動く」とわかる企画が理想的»へ続く

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