説明なしで「きっと人が動く」とわかる企画が理想的
続いては、大関の課題で「『ONE CUP大関』を30代の人が飲みたくなる企画」への応募企画で、「FUN!CUP!大関」。考案したのは、東北新社の阿部慎一郎氏、蚊爪進氏、齋藤洋介氏、織田章太郎氏。イベントには齋藤氏と織田氏が登壇した。
「FUN! CUP! 大関」は、「ワンカップ大関」の透明びんに、口ひげやアヒルのくちばしなどのビジュアルを添え、口に当てると自撮りアプリなどで加工したような見た目になる企画。2017年「第9回販促コンペ」で大関の協賛企業賞を受賞。若者世代が飲みたくなる、という課題にぴったりな上、企画がシンプルだったため、早い段階で商品化に至った。
齋藤:「ワンカップ大関」のイメージはとにかく年齢層が高いこと。若い方にもっと飲んでほしい、というのがスタート地点でした。企画時に目をつけたのは、パッケージの形状が「ワンカップ大関」の象徴(アイコン)であることです。
このカップを、若い人たちの生活の中に置くにはどうすればいいか。それで、「ヒゲ」や「くちばし」など、口元に当てると楽しいシールを付けることを考えたんです。一緒に企画した織田と共に、いろんなデザインを検討しました。
織田:企画書の構成で工夫したのは、ビジュアルをメインにしたことです。最後のページのみ、文章でまとめていますが、そこに至るまではテキストを置かず、写真やシールのイメージだけで構成しました。
齋藤:この企画が実現に至ったのは、贈賞式で大関のご担当の方から声をかけていただいたのがきっかけです。その後、実現に向けて細部を詰め、「ワンカップ」2本入りの箱にシールを入れた特別版ということで発売しました。
同時に、シールを貼った「ワンカップ」を口元に当てているような写真の投稿キャンペーンも実施しました。特設Webサイトでは、どんな写真が投稿されたかを見ることもできます。
嶋:「ワンカップ大関」を若者に飲んでもらう、というハードルの高い課題でしたが、シンプルなアイデアで突破した企画ですね。企画書のビジュアルを見ると、たしかにターゲットが「Instagram(インスタグラム)」などのソーシャルメディアに、写真を投稿している光景が浮かびます。説明なしで人が動くというのは理想的です。
桜田:10年前位から弊社ファッション誌の付録のマーケティングに携わっているのですが、付録の中でも「Instagram」での写真の投稿数が多いものは、雑誌の売れゆきがいいんです。最近では、付録を企画する際は「Instagram」に写真を投稿したくなるアイテムか、というのがポイントのひとつになっています。
ただ、どんなに面白い企画ではあっても、既存商品本体にはできるだけ手を加えたくない、加えられないというのが、一般的な制限だと思います。この企画のよさは、商品本体には手を加えず、「シールを貼れば『Instagram』に写真を投稿できる」と考えたのがいい点だったのでは。
さらに2つセットで売れ売り上げも上がりますし、写真を見ていても、いままでと違う若い層が投稿していて、新しいお客さんに手にとってもらえている。あるいは、いままで置いていなかったお店で扱ってもらえる可能性がある、という点も、実施側としての評価ポイントだったのではないかと思います。