周年事業こそ、企業のブランド力を高める絶好の機会だ

「すべらない記念日」にするために

記念日の存在が忘れられるのは淋しいですが、その反対に、頑張ったにも関わらずダダ滑りする記念日になってしまうのは悲惨でもあります。これまた私事なのですが、先日妻と記念日がありました。

前もって準備を整えてサプライズ演出にもこだわり、いざ当日を迎えたのですが、面白いほど妻には受けず見事にすべりました。私は当日の場所やら使用アイテム、コメントなど入念にセットしていたのですが、そもそも妻の細かな嗜好変化やその日の気分などは十分に分析できていなかったのです。それ以上に当たり前のことなのですが、夫の力が入れば入るほど妻は自分事として捉えられず、引いて(醒めて)しまうみたいなのです。私は軽く落胆するとともに、コンサルタントとして反省しました。

こうした私のような失敗は「周年事業」でも当然起こる可能性はあります。ただ頑張るのではなく、きちんと事業の実態を反映し従業員における空気感を鑑みた(上述のエピソードで言えば妻の気分や機嫌を緻密に分析した)上での計画を立てる必要があるのです。そして、上手く参画感を醸成する仕掛けを盛り込み、実施者と享受者という構図を作らないことが重要です(私の場合は夫側と妻側という構図を作ったことが敗因でした)。

サプライズ演出も重要ですが、事前に従業員に受容される空気を作っていなければ効果も半減してしまいます。また、気をつけなければならない点ですが、企業経営者は大抵その組織の中で成功を収めた人物なので、従業員に対して自身と同様の高いモチベーションを知らず知らずの間に要求しがちになります。周年事業においても従業員の実態に照準を合わせず、的を大きく外したメッセージを提示する可能性もあります。これでは逆効果です。

トップマネジメントは世の中に有言実行の約束をすると上述しましたが、従業員の実態を把握せずに周年メッセージを発信するのは計画不足と言えます。これは私自身の持論ですが、ブランディングを内部に向けて行う際には企業の中の声なき層、サイレント層の存在を常に頭の片隅に置くことが肝要です。このサイレント層こそがマジョリティを占める可能性があり、周年事業を効果的に進めることで企業変革の大きな梃子となる可能性があるからです。

次ページ 「この時代にこそ、ブランドの力で企業を一つのチームに」へ続く

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