ニューヨークを救った主婦!ジェイコブズに学ぶ、「人間中心」のマーケティング

計画と現実のギャップはどうして生まれるか

このような計画と現実のギャップは、アメリカというより、まるでソ連においてコミュニズムによる理想的な社会計画経済が現実的に経済的に停滞し破綻していくのを見ているようです。またマーケターにとっては、このような失敗は既視感があるでしょう。それはまるで企業が理想的な商品コンセプトをもとに発売したときの実際、売れなかった際のギャップを見ているようだからです。

このギャップがどうして生まれるのか。それはモーゼスと同様、企業は実際の市井の人々を軽視しているからです。その人々とはつまり「顧客」ということです。ジェイコブズが教えてくれるのは、現実を観察することの大切さです。彼女は都市を理解するには、賑わっていて活気がある街を観察することだと言っています。マーケターにとって重要な答えは顧客が常に持っているように、彼らが普段何気なく行動していること自体に秘密があるのです。

ジェイコブズに学ぶ「顧客」に注目したマーケティング

ジェイコブズは都市が活性化する要因として「人々が出会う機会の多さ」と「多様性」を挙げています。これはマーケティングに例えるならば、商品やサービスが顧客と出会う機会をなるべく多様に多くもつことが、その商品の活性化につながるということです。また、ジェイコブズは都市の一部とはひとつの役割を持つものではなく、複数の役割を持たせるべきものとも言っています。それはその多様性で様々な役割が人々との相乗効果をもつような価値を拡大するということです。

最近、このようなジェイコブズの「人間中心」の視点を倣ったような手法が実際に出てきています。それは「デザイン思考」と呼ばれるもの。デザイン思考においては、まずは顧客が抱えている現実から出発し、顧客との実際のプロトタイプによるフィードバックの繰り返しによってイノベーションを生み出していきます。理想や理念から出発するのではなく、現実的な人々の解決方法から出発することによって、モーゼスのような失敗を繰り返さないこと、そしてジェイコブズにならって、実際の人々=顧客との現実的なやり取りによってより良い解決方法を目指すことがそのアプローチの意義なのです。その意味でジェイン・ジェイコブズのストーリーや言葉は一見の価値があると思います。
 

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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