ダンスの発注・打ち合わせはワークショップ形式がおすすめ
さて、肝心のどうやって映像表現に組み込むのかというお話。
冒頭、抽象性と芸術性の話をしましたが、ストリートダンサーは基本的に自分たちのダンスをエンターテイメント(お客さんを楽しませる、感動させる)だと思っている一方で、コンテンポラリーダンサーのほとんどは自分たちのダンスをアート(見る人に新しい視点を与えたり、人間・社会の内面をえぐり出したりする)だと思っています。
広告映像は広義のエンターテイメントですよね?少なくともアートではない。
ということで、もともとの成り立ちから考えると相性はかなり悪いのですが、コンテンポラリーダンスが生み出す「不思議な踊り」は映像表現に抜群の破壊力をもたらすことがあるので、とても魅力的。
ただ、コンテンポラリーダンサー側も、ダンスと生き様が結びついている方が多いので、エンターテイメント思考にはかなりとまどうことがあろうかと思います。
ここでは方向は二つ。
しっかり仕事としてクライアントやクリエイターの想いを実現するために、自己表現は抑えてもらう。
もしくは、アートとしてやりたいようにやってもらって、それで成立するような企画のフレームにする。
ということでしょう。
さらに、映像表現者はコンテンポラリーダンスの抽象性とも戦わなければなりません。
「頭の中を蟻が歩き回っている感じで…」「体が溶けていくのを過去の自分が見ている感じで…」というような感覚で踊っている方々に「この炭酸飲料の弾ける感じを踊りで表現してください」という話をして形にせねばなりません。
これは自分としては明確な答えがありまして、ズバリ、ワークショップ形式で発注・打ち合わせすべし!ということになります。
コンテンポラリーダンスの方々は実際の作品作りの際にも、多くの場合、ダンサーで集まって即興で動いてみて振りを決めていくという形で進行しています。
ですので、通常のクリエイティブワークのように、オリエンをしてダンスを作ってきてもらうというよりは、ダンススタジオで打ち合わせをしながらその場で「こんな感じ」というのを作っていってしまうのが速いと思いますし、ダンスの作り手側もやりやすいと思います!
私も映像の仕事で、最近コンテンポラリーダンス的な振付をしましたが、「どういう動きが欲しいか」もさることながら、映像全体としての目的、どんなトーンで伝えたいのか(あたたかい、躍動感、緊張感、凛とした美しさなど)をたくさん投げかけながら、目指す方向に少しずつ整えていきましょう。