撮影中、本番で台本と違うことを突然やって…
澤本:その「繋がる」という話だと、前回言っていた二十歳の頃にやった自転車全国一周ともね。
満島:僕は本当にそれでしか生きてない感じですね。何かと何かが繋がっていくことの喜びが一番大きいので。僕は園子温監督のもとで助監督やってたんですよ。
中村:そうなんですか!?
満島:そうなんです。だから、僕は10代のときから園さんのことはよく知ってますし、付き人みたいな感覚で、家の掃除から何まで全部やってたので。園さんと僕の関係性も、役者と監督の関係性を超えたものがあって、でも、これが仕事として監督と役者でできることなんて想像もしてませんでしたから。
権八:その頃はね。
満島:その前に一度、『東京ヴァンパイアホテル』というアマゾン・プライムのドラマで園監督と初めて役者としてやらせてもらって、今回も声をかけていただいたので、それはもう行きますよと。
中村:園子温監督の『愛のむきだし』でお姉ちゃんの満島ひかりさんも大ブレイクしたじゃないですか。そういう若者というか、ある種の役者さんがズバ抜けさせるような、園監督の演出があるのかな?
満島:園さん自体がそうでしたからね。自主映画のときから、「東京ガガガ」という活動も含めて。言葉で伝わらないもの、力がない、振り落とされてしまうものを自分の力でウワーッと叫んで走りだすのが園さんの原点なので。そこを何か感じている人は内容もそうですけど、それ以上に人間性として、人間の質としてあるんだろうなと思うし。園さんが40代のときに僕は一緒にいたので、40代のときと50代の今の園さんは全く違いますし。
澤本:違うんですか?
満島:僕はそのとき10代で、今20代後半になっての園さんと僕の関係性もやっぱり違います。同じ人間でも時期、タイミング、場所が違うと全く違うんですよね。それが面白くて。でも、根底に信頼関係があると、何をやってもいけちゃうと思えるので、監督が見てるので、一度ぶっ飛ばしちゃって、やれる場所もあまりないので。
それでやってOKだったらOKなんだということだし、もうちょっと抑えるなら抑えてと言ってくれるし。最初からこれは行きすぎかな、先輩を前に立てすぎかなと、若者が頭で考えすぎちゃうと何の意味もないなと思ってるんですよ。行っちゃわないと。死ななければギリギリのところまで。
澤本:死ななければ(笑)。
満島:死んじゃうとみんなに迷惑かけちゃうので、ケガしないギリギリの状態を自分でも知らないといけないし。若者とは、これ以上いくとアキレス腱切れちゃうな、これ以上いったら崖から落ちちゃうというところのギリギリまで走ることです。
権八:今回は言ったらショートフィルムですよ。短い20分ちょっとの間に、頼んでいないのに満島くんがやってることが結構あるわけ。
中村:いいですね。
権八:ここではうまくはぐらかしますが、馬場ふみかちゃんを満島くんや浅野さん、ギャング団みんなで走って追いかけるシーンがあるわけですよ。本番ではワーッと走って追いかけないといけないのに、満島くんと手下たちが浅野さんとあえて逆方向に走っていって。そういう芝居を本番でやってたよね。
満島:そうです。裏でギャングの手下たちに浅野さんは左に曲がるから、俺らはまず右に曲がろうと。そういう楽しみというか、映像の中で自分達も楽しんでいて、撮ってる人達もまさかあそこで曲がると思わないので、そのときの奇跡ってあると思うんですよね。突風が吹くみたいな。
それを自分達で起こしていかないと。手下の人達とも、その日か前日にしか会ってないので、はじめまして、みたいなものなんですけど、みんなでエネルギー持って、みんなで行くからついて来てくれと言ったら、本当についてきてくれたんで。「えー、左、あっ」と言いながら。でも、監督がオーケー!と言って。
中村:いいですね~!
満島:そういう現場をどんどんつくっていきたいと思ってるんですよね。
澤本:そうなるとジャズですね。
満島:そうですね。セッションに近いところはあると思います。
権八:シナリオにないのに、その瞬間、要するに満島くんと手下たちがバーッと逆方向に行くから、浅野さんが焦ってるわけ。
一同:(笑)
権八:えっ!?て。うろたえているところが映っていて、監督がオーケーって。超面白いんですよ。
満島:走ると言っても、ただ走るだけのシーンにはしたくないというのがいつもあるんですよ。だけど、いきすぎると物語を崩しちゃうので、制限の中での自由奔放さ、動物的なものを常に出したいと思ってます。
権八:鬼気迫る芝居をやってくれたり、一気に作品の幅を広げているのが実は満島くんで、すごいですよ。