2017年から一気に出演が増えた理由は?
満島:今できる本当に精一杯、100%を出すしか方法がないんですよね。計算したって、やっぱり大先輩、キャリアがある人、長く生きてる人には計算では絶対に勝てないので、計算じゃないところで、計算ができる大人たちとちゃんと組むという。僕らが後ろのロケットのエンジン部分になれれば映画って絶対に見えないものまで映ると思ってるので。特にこういう映画だからこそ、時間もなければ、みんな試行錯誤で新しいことをやっていて。大人たちの計算が効かない世界じゃないですか。
権八:その通り(笑)。
満島:だからみんな同じ立ち位置に立って、みんなで行かないと、いろいろなことに負けちゃいけないと思ってるので。映画界も含めてそうですけど、僕らもこれから映画界をつくっていかなければいけないと思ってるので、その中でこれをやったということが、何年後か、いつか、あのときに1つの新しいものをつくったから、あれに参加してたから、また何かできるかもしれないというエネルギーになると思って。
中村:「新しい地図」という取り組みにもマッチしてる理念ですよね。つくり方自体が。
権八:おっしゃる通りで、みんなやったことないから、みんな手探りというか。だからエピソード4でも当然辻褄合わせが難しくて。
一同:(笑)
満島:3つの監督が全然違うテイストでつくってますから。
権八:それで慌てて声だけもらいに行ったり。
満島:でも、そういうものづくりっていいなぁと思っていて。それもまた、ずっとトップスターで走り続けてきた、エンターテインメント業界を支えてきた人達のところに、若者がまた違う息吹をもたらすという。そうしたら、お客さんにも新たな風が吹く気がしていて。こうなるんでしょ?と思って見てたら、「え? こんな感じなんだ」という、ちょっとした驚きが。
今は携帯やパソコンなどのネット文化が普及しすぎて驚きって少なくなってるんですよね。だから、作品の中で驚かせるとなると、現場でもみんなが驚いてないといけないと思ってるんですよ。感情じゃないところ、反射のような。熱い、冷たい、というのは、声出るよりも先に体が動いちゃってるという、あの驚きがこれから必要なんだろうなと思っています。
今までは発散できなかった悲しみや喜びを、それ見て共有して一緒に泣いて、笑って、よし生きていこうってありますけど、それが普通に家でもできちゃうので。そうじゃないものを映画館の中で見てもらえたら。しかも、「新しい地図」のお三方が呼んでくれるたくさんのお客さんにも、また違うエネルギーが見えたりすると、やってよかったなと思えるかもしれないなと。
中村:真之介くんは2017年から映画の出演が一気に増えていて、そのへんにこういう風に表現すれば結構いけるかもと、今言っていたようなことがわかった感触があったんですか??
満島:それもタイミングだと思っていて、ハマり出してきたんですよね、運も、タイミングも、そして題材も。役柄に関しても、小さい役もあれば大きい役もあって。でも、映画の中でちょっとしか出てないから小さいわけじゃなくて、かなりキーポイントの場所、要するに料理でみんなが食べて気づかないけど、絶対に入ってなければいけないダシの粉の骨のような。最初にスープとったときの一番大事だったこの組み合わせ、というところに、この歳で入れているのはうれしいんですよ。逆に真ん中に立つよりうれしかったんです。
それが去年、7、8本ぐらい公開されて、戦争の映画もあれば、時代劇もあったり、エンターテインメントっぽいものもあったり、法廷劇があったり、いろいろなものがあったんですけど、その中でも自分のその日の状態と、みんなを信じて出すことをやっていくと、「あっ、何かが繋がってくるんだな」というのは感じましたね。表現の芝居の方法がどうこうというのはそれぞれの現場によって違いますし、脚本の書かれ方から求めているものから何から、スタッフも全員違いますから。積み重なっている部分、積み重なってない部分、一回ゼロにしなければいけない部分があるので。
でも、自分の人生はゼロにはしたくないし、ゼロにはできないので、その中の引き出しを今回はこことここを開けてみるか、いつもは出せないけどこの1シーンしか出ないんだったらガッツリ出しちゃっていこうなど、どんどん挑戦してます。挑戦しないと気づかないんですよね。去年の僕がやったことは、今の僕はもうできないんですよ。全然人が違うので。
だから、映画はそういう風に、自分の生きた過程を残してくれてるんだなと、ちょっとずつ思いはじめてきました。だから、本当、仕事の面でどこを目指しているかというのはあまりないかもしれないし、でも人間的にはもっともっとたくさんの人と出会いたいと思うし、これから下の年齢の人達も、上の年齢の人達も、ちょうど間に立つところに入っていくと思うので、それをまたどう楽しむかを考えてます。
まだ20代が1年半ぐらいありますけど、20代にやれることをガンガンやって、30代もっともっと楽しくなるだろうなとは思ってますね。
中村:そろそろ、お別れの時間が近づいてきてしまいました。いよいよ「新しい地図」プレゼンツ、『クソ野郎と美しき世界』、こちらは4月6日から公開ですね。
満島:2週間限定で全国公開なので、2週間しかないので、ぜひとも。なかなかこういう映画を見る機会なんて、これから先も権八さんたちがもう一度つくらない限りないかもしれないので、これは逃しちゃいかんなと思いますね。
権八:ひとつお祭りだと思って、ぜひみなさん。
満島:とても面白いと思いますし、僕らも楽しみにしてますので、ぜひよろしくお願いします。そして、夏の公開の映画もありまして、『君が君で君だ』という素敵なタイトルなんですけど、脚本・監督があの松井大悟さん。まだ若い、30代の、『アフロ田中』とか、『私たちのハァハァ』『アズミ・ハルコは行方不明』などを撮っている。その監督のオリジナル脚本です。映画界もなかなかオリジナル脚本が少なくなってる中で、今回のクソ野郎と美しき世界もそうですけど、オリジナルでやれるということの喜びが今あるんですよ。だからオリジナルをどんどんやっていかないといけないなと思いますし、この松井監督ともこれから同じ時代を築いていく感じになると思うので、ぜひこれは。池松壮亮くんと、キム・コッピさんという韓国の女優の方、『息もできない』のヒロインの方です。
一同:おー。
満島:それと僕と大倉孝二さんでお送りしてます。またこれがですね、ブラッドピットという役名で映画に出てます。謎だらけなんですけど、また映画界がエネルギーを持つような作品に出られているので、7月7日、七夕公開でございます。
中村:2018年もやばそうですね。この男は。
満島:僕自身もここからまた新しい世界がはじまっていきそうな気がするんですよ。今年から。なので、これからも末永くよろしくお願いします。急に営業みたいになっちゃいましたけど。
一同:(笑)
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構成・文:廣田喜昭