プライベートで描いた絵が作中に使われている
香取:良かったですね。山内監督もそうですけど、空気。あと慎吾ちゃん役というのがあって、もともと僕は役づくりというのがわかってなくて。行って現場で言われて、本番で何とかやりますというタイプなんです。今回の映画の中では僕のアトリエのような部屋が出てくるんですけど、そこに置いてある絵は全部僕が描いた絵です。
澤本:自分でリアルに描いた絵を。
香取:アトリエに絵を使いたいということだったので、山内監督が僕のアトリエに来て、そこから20枚以上選んでもっていって。僕がセットに入ったら自分の絵がバーッと飾られていて。自分の世界で自分だったから、すんなり入れました。だから、いろいろな役をこれまでやらせてもらって、「これは素に近いですか?」と聞かれるんですけど、その中でも今回はほとんど素だから、ちょっとあまり見られたくないような。それこそラジオって素に近いんですよ。
澤本:普段、テレビで見かけているときはもうちょっと声を張っていて。
香取:「おじゃまーっぷ!」「ザキヤマなんだよ、お前!」って。
一同:そうそう。
香取:でも、ラジオの感じが普段に近いとしたら、それがこの映画のアトリエのような部屋では、歌喰いのセナちゃんと話すところなど、結構静かにボソボソ話していて。
権八:あとね、僕ビックリしたのは、実際に絵を描くところを初めて見たんですよ。
中村:そういうシーンもあるんですね。
権八:当日、本当はそういう段取りなかったんですよ。台本にもないの。でも、どうしてもそのシーンを撮らないといけなくなって、目の前で振られて、白いキャンバスを前に「じゃあ描きます」って。
香取:いえ、あれは僕が言ったんですよ。絵を描くところがなかったんです。こんなに絵が出てきて、絵を描くアーティストの役なのに。使わなくてもいいから、ちょっと描いてるところを撮ったらどうですか?って。
権八:そうだったんだ!
香取:言ったら、それが結構大事なシーンになっていて、そのシーンの説明をいろいろな人がするんですよ。自分の中では、あの日、俺が言わなかったらどうなってたんだろうって(笑)。ポロッと言ったことでいろいろなことが積み重なるというのが、この映画の中にいっぱいあります。
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構成・文:廣田喜昭